【墨汁少女】
あれ? 「女子高生が書道で町おこし」…したの? 等、2時間ある割には、物語の未回収ぶりに不満も多いのですが、書に向かう少女の力強さが顕れていた所はとてもよかったので、みた甲斐はありました。
しかし本作の少女たちはストイックですね。これは墨汁の漆黒に呼応していましたが。灰色に薄まるってことがなく、みんな頑固。
書道部各メンバー、それなりの魅力でしたが、成海璃子演じる里子の強さがやはり特出していました。その落ち着きぶりもすごかった。初登場時は気だるさまで醸し、あなたが顧問の先生じゃないの? て思ったり。
彼女しょっちゅう、眉間に皺寄せていて、このトーンが最後まで変わらない。個人的には、最近みた中では珍しく、頑なに残る少女像で尾を引いてます。
逆に、大人が弱い弱い。凝り固まって、疲れて、壊れて、という情けなさ。だから、少女たちと大人の間に挟まる、顧問の若い先生の無責任ぶりが、かえってリアルに響いてました。あれ、うまい処世術だと思ってしまった。
書道パフォーマンス大会の運営も、実際は大人が骨を折って助けないと、実現は難しいと思うのですが、そういうことをする人物は表に現れない。どうも、もう大人には期待できない、と欄外で言っているような感じです。
そんなわけで、里子の両肩にはけっこう重いものが乗ってゆくのですが、彼女、それを受け止める力持ち、なんですね。これ、よいのか悪いのか(笑)。そして実際に20キロあるらしい、大筆にすべてを託すことになりますが…。
書道パフォーマンスは、演技者の主観になる位、カメラに寄って欲しかった。ちょっと素っ気なかったです。
しかし、里子の戦士ぶりは伝わりました。大股開きで踏ん張り、つるはしで地面を抉るように書を叩き込むその姿は、いや美しいのですが、あまりに力強くて、そこで書かれる文字からも、お産のメタファーのようにも見えてしまったのですが(笑)、そのうち、何やら、銃を筆に持ち替えたサラ・コナーのようにも思えて来ました。
しかし本作でジョン・コナーに当たるものが何なのかは、よくわかりません。やっぱり女子高生にそこまで背負わせちゃいけないよなあ、と思った次第。
書をするのに、長髪を垂らすのは邪魔では、とはじめ思っていたのですが、里子のポニーテールは、パフォーマンスに揺れる、彼女の心の筆なんですね。だから茶髪でなく墨汁色。これ、勝手に納得して楽しんでました(笑)。
<2010.5.23記>