Inagaquilala

ノック・ノックのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ノック・ノック(2015年製作の映画)
3.9
キアヌ・リーブスがよくもこんな役に挑戦したなというのが正直な感想。なにしろ深夜に訪ねてきた見も知らぬ女子2名に誘惑されて、不適切な関係を結んでしまい、翌朝になってから、その女子たちから脅され、作品の中盤からは椅子に縛られたままの状態が続くのである。女子たちは徹底的に家を破壊し尽くし、留守中の妻の衣服やアクセサリー、美術品にまで手をかける。まさに主人公にとっては地獄絵のような状態。作品の焦点は、果たして主人公がこの窮地から抜け出すことができるのかに絞られていくが。

プロデューサーにも名を連ねているので、キアヌ・リーブスは、ある程度、この作品に共鳴して出演しているのだとは思うが、それにしても「ジョン・ウィック」でスタイリッシュな殺し屋役を演じている彼が、作品の大半を情けなく椅子に縛り付けられているのは、どうなのだろうと思ってしまう。しかも相手は、ティーンエージャーだと主張する女子2名なのだ。もしかしたら、ハリウッドスターのなかでも、ちょっと変わり者で通っている彼が、颯爽とアクションをこなす他の役とのバランスを取るために、この役を演じているのではないかと深読みなどしてしまう。

とはいえ、突如、誘惑者から脅迫者へと変身を果たす女子2名は、かなり怖い。未成年との不適切な交流は刑務所行きだという状況があるために、主人公はかなり動揺する。この恐怖の女子2名を演じているのは、ロレンツァ・イッツォとアナ・デ・アルマス。ロレンツァ・イッツォはこの作品の監督であるイーライ・ロスの奥さんで、アナ・デ・アルマスは、「ブレードランナー 2049」でライアアン・ゴズリングの仮想恋人のジョイ役を演じているいま人気上昇中の女優で、このふたりはかなり存在感を放っている。シリーズ化して欲しいほどの強烈なコンビだ。

とにかくこの最強の女子2名に脅迫され、美しい豪邸を破壊され尽くす、それをただ主人公は眺めるだけという、別な意味でかなり怖いサスペンススリラーとなっている。観ているだけでも恐ろしくなってくる。ラストシーンは中途半端なところで終わるのだが、このシーンがもしかしたら、良き家庭人たちにはいちばん恐怖のシーンかもしれない。
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