TAK44マグナム

カイト/KITEのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

カイト/KITE(2014年製作の映画)
2.6
舐めてたヤク中女子が殺人マシーンだったよ、どうしよう!


「アリータ/バトルエンジェル」が中々面白かったので、そういえば同じように日本のアニメが原作ながら未だ観ていなかった本作をチョイス。
主人公が少女というのも近いし。

未見だった理由は、どうにも酷評が多かったので後回しにしていたからなんですけれどね(汗)
で、観てみると・・・
奥浩哉や桂正和、士郎正宗といった名だたる方々が褒めてますけれど、本当に?
リップサービスじゃないのかな(汗)
そんな風に訝しんでしまう出来でありました。

本作は、気鋭のアニメーターである梅津泰臣が手がけたカルト的人気を誇るアダルトOVAが原作。
監督は、当初の予定では「デッドコースター」や「シャークナイト」のデヴィッド・R・エリスだったのが、ロケ地のヨハネスブルグで本作の準備途中に亡くなってしまった為、急遽、よく知らない監督さんに交代してしまいました。
主演は、オリヴィア・ハッセーの娘であるインディア・アイズリー。
共演に、いつも通りのサミュエル・L・ジャクソン。


経済が破綻し、秩序が失われつつある世界。
国家が半ば崩壊していながらも何故か機能している警察で警部補をしているアカイ(サミュエルの旦那)は、1人の少女を暗殺者に仕立て上げ、人身売買組織壊滅のために協力させていた。
少女の名はサワ(インディア・アイズリー)。
彼女の両親は、組織のボスであるエミールによって殺されたらしく、その敵討ちでもあった。
アカイに与えられる麻薬によって記憶障害をおこしながらも、着実にエミールに近づいてゆくサワ。
謎の少年オブリの忠告も虚しく、サワの手は血に染まってゆく。
はたして、サワはエミールを討つことができるのであろうか?
しかし、事件の黒幕は思いもよらぬ人物であった・・・!


「KITE」や「Yellow Star」等の梅津作品の味って、日常にヴァイオレンスが突然放り込まれ、その渦中でキャラクターが抗うのをどこか突き放した感覚でみているところにあると思っているんですけれど、それをスタイリッシュ且つノワールな雰囲気で演出している印象。
アニメやコミックの実写化作品に多く見受けられる作風ですけれど、本作の場合は正直いうと安っぽい。
凝ってはいても映像と音楽に深みもないから、どこか上辺だけのミュージックビデオみたいです。
そう、「それっぽいだけ」に感じてしまいました。
そして、その「それっぽさ」は梅津作品のそれじゃないような気がします。

また、他にも重要なことがひとつ。
何かというと、エロティシズムです。
エロくないのはダメでしょう!
ブラジャーまでなんて言語道断、脱げないなら脱げる女優さんでいくべきでした。
レーティングをもう一つ上げてでも、梅津作品ならエロくないと!
セックス&ヴァイオレンスですよ。どちらか片方が抜けても宜しくない。
あ、もしかしたらエロシーンをカットしたインターナショナルバージョンを元にしているって事なのかな(汗)

内容的には、ガワは似せていても原作とは全く違いますね。
とは言うものの、完全に無視するわけではなく、そこかしこに原作を想起させるカットが散見されたり、(改変が酷かったとの噂がある)脚本を書き直したものが使われていて、最低限のリスペクトは感じられます。
また、イヤリングの様な小物や、炸裂弾などのガジェットは原作から(特にそこまで意味は無いものの)持ってきています。
サワやアカイ、オブリなどのキャラクターの名称が変更されていないのは好印象ですね。
名前って、万国にウケそうなものに変えられることが多いですから。
でも、サワがジャンキー過ぎてイメージが180度違うし、オブリの役割やアカイの印象もこれじゃない感がすごい。

平板で淡々と進むのもキツいし、何かひとつでもウリになるアクションでもあればまだ良いんですが、それも見当たらない。
雰囲気がムンムンしていたのは冒頭のエレベーターだけかな?
パルクールも見せてくれますが、ほんの少しだけだし(←しかも敵が飛んだり跳ねたりするだけ)。
あとは予算が少ないからか派手さに欠けるし、インディア・アイズリーの身体能力的に無理なのか、驚くようなアクションも無かったです。
エミールに捕まってからは、いきなりホラー風になって少しだけ盛り返しましたけれど。
それも、あくまでもホラーファンとしてですが(苦笑)
そうそう、どうせ原作と変えるなら、いっその事あのまま腕がフライにされていたら「片腕マシンガール」みたいで面白かったのに。
そういったユーモアとは無縁のシリアスな作風が終始重くて胸焼けしそうになりましたよ。


というわけで、せっかくの梅津作品の実写化でしたが少し残念。
仕方のない事とはいえ、監督の交代が少なからず影響しているなら、デヴィッド・R・ハリスが手掛けた「KITE」も観てみたかったなぁ。
監督したラルフ・ジマンという人には悪いですけれど、例えばイーライ・ロスや、最近だとポーラー/狙われた暗殺者」が最高だったヨナス・アカーランド版の「KITE」だったらどんなだろうと夢想してしまいますね。

あと、凧を上げればいいってもんじゃないし、「自由」とかの比喩なのかもしれませんが、所詮は糸に繋がったままじゃないのって思ってしまいました。
原作アニメ通りのラストが欲しかったなぁ・・・
あのラストありきの作品だと、ずっと思ってきたのに、そこは本当に裏切られました(涙)


dTVにて