一人旅

リトル・ボーイ 小さなボクと戦争の一人旅のレビュー・感想・評価

5.0
アレハンドロ・モンテベルデ監督作。

二次大戦時のアメリカ西海岸を舞台に、出征した父親を連れ戻すべく奮闘する少年の姿を描いたヒューマンドラマ。

メキシコ出身の新鋭:アレハンドロ・モンテベルデ監督が作り上げた“戦時+ジュブナイル映画”の良作で、本作はメキシコ最大の映画賞であるルミナス賞で作品賞を含め3冠に輝いています。

二次大戦時、アメリカ西海岸の田舎町で家族と暮らしている8歳の少年:ペッパーを主人公にして、偏平足により徴兵不適格となった兄の代わりに大好きな父親が戦地に送られてしまった中、町の司祭から渡されたリストに記されたいくつかの課題をクリアすることで父親を戦地から連れ戻すことができると勝手に信じた主人公の奮闘を瑞々しく描いています。少年が挑む課題には「病気の人を見舞う」「ホームレスに泊まる場所を提供する」「死者を埋葬する」といったものに加えて、「日系人に親切にする」という後から書き足された一つの課題が少年の物語に大きく関わっていきます。

戦地に行った父親を自分の力で連れ戻せると信じ込む少年の健気な奮闘劇の過程で、戦時下における日系人への憎悪と差別心を鋭く浮き彫りにしています。人々から酷い差別に遭っている日系人男性:ハシモトと少年の人種&世代を超越した交流と友情が、死と憎しみが支配する戦争という時勢において、人々が忘れていった温かな人間性の尊さと平和への祈りを提示しています。

『禁じられた遊び』『さよなら子供たち』『戦場の小さな天使たち』『蝶の舌』のように幼い子どもの視点で戦争と平和の本質を眺め、親と子の普遍的な愛情と絆を心温かく紡ぎ出した感動の人間ドラマ。主人公の少年を演じたジェイコブ・サルヴァーティの純真な眼差し、母親役:エミリー・ワトソンの哀しみと愛情、そして日系人ハシモト役:ケイリー=ヒロユキ・タガワの孤独と痛み―適材適所なキャスティングにも魅了されます。
一人旅

一人旅