小波norisuke

悪党に粛清をの小波norisukeのレビュー・感想・評価

悪党に粛清を(2014年製作の映画)
4.0
邦題は「悪党に粛正を」といかにも西部劇らしいのに、原題は「The Salvation(救済)」。Salvationは、とりわけキリスト教文化圏では聖書的な意味を想起してしまう単語であろう。復讐劇のタイトルがどうして「救済」であるのか、その意味がわかったときに愕然とした。何が善で、何が悪であるのか、混沌としてしまった無法地帯では、「救済」は、このような方法でしか訪れないのかと打ちのめされた。

マッツ・ミケルセンが出ていなければ観ていなかった。期待を裏切らず、マッツに魅了された。煮えたぎる怒り、どうしようもない悲しみや痛みを、寡黙に抑制された動きで顕わす。

同様に、一切言葉を発しないエヴァ・グリーンとの互いにほとんど表情さえも動かさずに意思疎通する場面が圧巻だ。

全体的に青みがかった暗い映像と、控えめに流れる音楽が、主人公の心の動きと同調する。

この不屈の救世主は、これからどのようにして生きていくのだろう、と想像を掻き立てられるラストが印象的だ。

西部劇をほとんど観たことのない私をも酔わせてくれた作品。
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