凜太郎

追憶の森の凜太郎のレビュー・感想・評価

追憶の森(2015年製作の映画)
3.0
うーん…惜しい。妻に先立たれ自ら樹海に入り込んだマシュー・マコノヒーの「やさぐれ感」もやっぱりいいし、身内の喪失に対してフィクションという形で応えるというテーマもいいのだけれども、本当に些細ないくつかの点がなんともビミョーで…もう少しだけ突き抜けた強さがあれば、という感じです。

でもこの監督は主人公の秘めた感情を吐き出させるシーンがやはり卓越していると思いました。グッドウィルハンティングと同じ監督なのですが、そっちでもかなり感動しましたよ。物語の中盤まで主人公が胸の内に秘めている本当の思いは明かされません。しかもそれを吐露するシーンはドラマチックではなく、焚き火を囲んで淡々と振り返るだけ。それだけのシーンなのですが、「この人は妻とのことを何度も頭の中で反芻したのだろう」と感じさせるようなマシュー・マコノヒーの諦念した感じがなんとも良かったです。特に夫婦関係を振り返る中で、「自分は妻が好きな紅茶が減るとを買い足していた。でも妻に気づかれないように」「妻は妻で、アイロンがけしたシャツをあえて奥の方にしまう。その気遣いを悟られないように」というなんとも不器用というか、また逆にそれが人間らしいというか。あまりに関係がギクシャクしすぎて、お互いの優しさすら見せられない。だけど本当は思いやりあっていたという悲しくも人間臭い二人の関係。そして焚き火に照らされながらそれを独白するマコノヒーさん、100点でした。

あえて残念だったところをいうとするならば、渡辺謙さんが演じる日本人の設定。「樹海へ来たのは仕事を失ったから」。そういう方も多くいると思うので何も言えませんし、突然現れ唐突に消えるキャラなので、まあそこは割り切ったということなのでしょうが、細かなことを気にしてしまう自分は若干薄さを感じてしまいました。
でも全体としては気に入っている映画です。一つのシーンが刺さってしまうとなんか記憶に残ってしまいますよね。
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