Narmy

黄金のアデーレ 名画の帰還のNarmyのレビュー・感想・評価

3.9
姉を亡くした老女マリア。
その姉の遺品の中にあった弁護士からの手紙で姉妹の叔母の肖像画「アデーレの肖像」他数点がナチに略奪され、今はオーストリア、ウィーンのベルベデーレ美術館の所蔵になっていることを知る。
マリアは家族ぐるみの付き合いがあるルーツは同じオーストリアである若い弁護士ランディに訴訟の相談をする。
これは美術品返還を求める所有者であるはずのマリアと、略奪しそのまま所有してきたオーストリア政府との法廷闘争を描いた実話。

絵画は叔母アデーレの遺言により寄贈となっている。
もしアデーレが生きていてオーストリアがこのような歴史を辿った場合、やはりマリアの言うようにウィーンの美術館に寄贈とはならなかったのだろうか。
途中までは、、、この遺言が真実なのか偽りなのかによってもこの話のイメージが私の中ではかなり変わっていた。
手放しで返還を要求するところの意味に少しの違和感を感じたために、訴訟をする確かな何かを探ってしまっていた。
でもマリアの半生がストーリーの途中に何度も何度も入るにつれ、絵画を取り戻したいというだけではなく、もっと別の根深い意味があることを知る。
オーストリアにもかなりの数、熱烈なナチ党員がいたのか。。
ナチに対するオーストリア国民の歓迎ぶり。。
それならマリアがあそこまでオーストリアの地を畏れオーストリア政府と対峙していくのは当たり前だと思える。

ナチに関するものを観るのは今だに慣れない。
何よりの恐怖がそこにあり心を抉られるから。
ランディがホロコースト収容所の跡地を訪問した後に抱いていく強い思いが、私達が現実に歴史に触れることがいかに大切かということに気づかせてくれる。
心が重くなりすぎて見ないで済むなら、、知らないで済むなら、、と思っていたことにも、触れていかなければいけないと痛感。
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