きゃんちょめ

ピクニックのきゃんちょめのレビュー・感想・評価

ピクニック(1936年製作の映画)
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【運動を書く装置:シネマトグラフ】

ニセフォール・ニエプスが1827年に世界で最初の写真を発明した。さらにその後を継いだダゲールが1839年にダゲレオタイプ(フランス語ではdaguerréotype)を発明した。日本語ではこれを「銀板写真」という。つまり、写真の発明時期とオノレ・ド・バルザック(1799-1850)のリアリズム文学の全盛期とが一致しているのだ。さらに、映画の発明時期とエミール・ゾラ(1840-1902)の自然主義文学の全盛期とが、これまた一致している。というのも、リュミエール兄弟が1894年に「シネマトグラフ(=運動を書く装置)」を発明しているからである。さらにそのシネマトグラフを買い取ったジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』が1902年である。要するに、リアリズム小説の完成期と、視覚的メディアの誕生はほぼ同時と言えるのだ。

本作はフランスの自然主義の作家ギイ・ド・モーパッサン(1850-1893)の原作で、モーパッサンの友人だった印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)の次男であるジャン・ルノワール(1894-1979)が監督した作品。父の世代への敬愛を込めて作ったとされている。

約40分間の短い作品の中に、①これからのドラマを予感させる奥行きの空間表現として有名な、二人の男に挟まれた窓ごしにブランコが見えるシーン、②そのブランコを映しながらカメラ自体が揺れ出すシーン、③恋愛の急展を暗示するかのように突然雨が降り出すシーンという、映画史に残るシーンが詰め込まれている。
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