きゃんちょめ

カフカの恋のきゃんちょめのレビュー・感想・評価

カフカの恋(1988年製作の映画)
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1.【なぜ歳下との恋愛がうまくいかないのかというと、少女が素朴で男は卑屈だったから】
「ぼくはひとりの少女を愛した。少女もぼくを愛した。しかし、ぼくは去らねばならなかった。なぜか?ぼくには今でもわからない。まるで彼女のまわりを兵士がとり囲んで、外に向かって槍を突き出しているかのようだった。彼女に近づくと槍の先が突き刺さり、傷つけられて、すごすご退散しなければならなかった。無数の傷にどれほど苦しんだことか。少女に責任はなかった。その点はよくわかっている。じつは、ぼくのほうも兵士に取り囲まれていたのだ。ただし、その槍の先は内側に、つまりぼく自身に突きつけられていた。少女に強引に近づこうとすれば、まず自分の周りの兵士たちの槍に刺され、ここでもう前進できなくなったのだ。少女はそれからずっとひとりなのか?いや、他の男がやすやすと、なんの妨害も受けずに彼女に近づいた。彼らの顔が初めてのキスで重なり合うのを、ぼくはただぼんやり見ていた。ぼくはまるで空気のようだった。」(カフカ著『断片』)


2.【目論見が失敗したときにこそ真実は掴める】
「避けようとして後ずさりする、しかめっ面に、それでも照りつける光。それこそが真実だ。ほかにはない。」(カフカ著『罪、苦悩、希望、真実の道についての考察』)


3.【本を読むのは自分を粉砕するため】
「いったい何のためにぼくらは本を読むのか?君が言うように、幸福になるためか?やれやれ、本なんかなくたって、僕らは同じように幸福でいられるだろう。いいかい、必要な本とは、このうえなく苦しくつらい不幸のように、自分よりも愛していた人の死のように、すべての人から引き離されて森に追放されたときのように、自殺のように、ぼくらに作用する本のことだ。本とは、ぼくらの内の氷結した海を砕く斧でなければならない。」(カフカ著『友人への手紙』)


4.【普通というのは憧れになりうる】
「結婚し、家庭を築き、生まれてくる子供たちを育て、守り、少しだけ導いてあげること。これこそひとりの人間にとって、この上ない成功です。ぼくはそう確信しています。多くの人々がごく簡単にそれをやってのけているからといって、そうではないという証拠にはなりません。」(カフカ著『父への手紙』)


5.【誠実であるほど物語ることが難しくなる】
「ぼくは、ちゃんと物語ることができません。それどころか、ほとんどものを言うこともできません。物語るときはたいてい、初めて立ち上がって歩こうとする幼児のような気持ちになります。」(カフカ著『フェリーツェへの手紙』)


6.【物書きは、書けば失敗、書かないと邪魔者】
「ぼくの生活は以前から、書く試み、それもたいてい失敗した試みから成り立っていました。書かないときは、ぼくは床に横たわり、箒で掃き出されて当然といった状態になるのでした。」(カフカ著『フェリーツェへの手紙』)


7.【でも、社会的地位がないことの喜びもある】
「この前、ぼくが道ばたの草の繁みに寝転ぼうとしていると、仕事でときどき会う身分の高い紳士が、さらに高貴な方のお祝いに出かけるために、着飾って二頭立ての馬車に乗って通りかかりました。僕は、真っ直ぐに伸ばした身体を草の中に沈めながら、社会的地位から追い落とされていることの喜びを感じました。」(カフカ著『フェリーツェへの手紙』)


8.【たとえ強くなっても、いつまでも弱き者たちと共にいることしかできない】
「ぼくは本当は他の人たちと同じように泳げる。ただ、他の人たちよりも過去の記憶が鮮明で、かつて泳げなかったという事実が、どうしても忘れられない。そのため、今は泳げるという事実すら、ぼくにとってはなんの足しにもならず、ぼくはどうしても泳ぐことができないのだ。」(カフカ著『断片』)


9.【自殺しない方法を考えるという生き方】
「ぼくの人生は、自殺したいという願望を払いのけることだけに、費やされてしまった。」(カフカ著『断片』)


10.【人としていま生きているということ自体が既にひとつの巨大な責任でもある】
「いっさいの責任を負わされると、おまえはすかさずその機会を利用して、責任の重さのせいでつぶれたということにしてやろうと思うかもしれない。しかし、いざそうしてみると、気づくだろう。おまえには何ひとつ負わされておらず、おまえ自身がその責任そのものにほかならないことに。」(カフカ著『八つ折り判ノート』)


11.【肉体にさえ確信がもてないと不安とストレスで死ぬ】
「ぼくはいかなる事にも確信がもてず、自分の肉体という最も身近なものにさえ確信が持てませんでした。気苦労が多すぎて、背中が曲がりました。運動どころか、身動きするのも億劫で、いつも虚弱でした。胃の健全な消化作用も失ってしまい、そこで憂鬱症への道がひらけました。そしてついには喀血までやりました。」(カフカ著『父への手紙』)


12.【自殺してみたところであの世がラクとも限らないのではないのか】
「死にたいという願望がある。そういうとき、この人生は耐えがたく、別の人生は手が届かないようにみえる。イヤでたまらない独房から、いずれイヤになるに決まっている新しい独房へ、なんとか移してほしいと懇願する。」(カフカ著『罪、苦悩、希望、真実の道についての考察』)


13.【すべては偶然的に成り立ったことなのだから、いずれそれらが理由もわからないまま無の中に溶けて消えていくことがないと、どうして言い切れるだろうか】
「ミルクのコップを口のところに持ち上げるのさえ怖くなります。そのコップが、目の前で砕け散り、破片が顔に飛んでくることも、起きないとは限らないからです。」(カフカ著『ミレナへの手紙』)
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