あまのうずめ

砂塵にさまようのあまのうずめのレビュー・感想・評価

砂塵にさまよう(2003年製作の映画)
3.4
ナザルはレイハネと結婚したが妻の母の噂のせいで離婚しなければならなくなる。離婚には妻への慰謝料が必要な上結婚ローンも抱えているナザルはシフトを増やそうとするも叶わない。職場に結婚ローンの保証人の遠い親戚が取り立ての逮捕に来る。ナザルは停まっていた車に潜り込むと車は砂漠で停車する。


▶︎『セールスマン』『別離』でベルリン、カンヌ、アカデミー賞の各賞を受賞し続けたアスガー・ファルハディ監督の長編デビュー作。デビュー作を振り返って観ると監督のメッセージ性が高いことがより分かり、最近の『英雄の証明』の理解度がより深まった。
本当イランの社会の根底にあるイスラムの影響の高さは想像を絶する。

ナザルの子供染みた思考や口先だけの言動とヘビ獲りの旦那の無口さと一貫した態度の対比が面白く、タイプは違えど妻に対しての愛情の深さと妻との別離は共通した両者が交わった結果の描き方も抜群に上手い。

所謂西側社会から見れば稚拙とも思える新興国の制度を享受しつつ、こちら側に考えるきっかけを提示するファルハディ監督の始まりがここだと知れた。
一面砂漠でのシーンの難しさを感じさせず美しく見せた撮影もラストカットの小粋さも印象的だった。

WOWOWの『アスガー・ファルハディ監督特集』にて鑑賞。