ゆ

リリーのすべてのゆのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.8
「自分らしく生きるのに、どれほどの犠牲と覚悟が必要なんだろうか」

世界で初めて性転換手術を受けた、とある男性の痛いほどに切実な生涯と
それを支えた妻の葛藤、言葉では言い表せない深い絆を描いたノンフィクション作品。

一つの体の中に二つの人格があったとして
そのうちの一つの人格を消すと言うことは、
一人の人間を殺してしまうのと同じことなんだと言うのを痛感させられた。

男性として生まれてしまったアイナーが性転換手術をする、と決意した時
リリーとして、女として生きたいと願う夫の意思を受け入れつつも、夫である"アイナー"との永遠の別れをどうしても受け入れられない、そんなゲルダの複雑な胸の内を思うとなんともいたたまれない

「(男性器がついている)こんなのは私の体じゃない」と嘆き苦しむアイナー(リリー)
その一方で
「女性として生きたいリリーの気持ちは尊重したいけど、私が愛したのは男性であり夫の"アイナー"」なのだと傷付くゲルダ

どちらの主張も間違っていないし、誰が悪いわけでもない。こんなのは神様の悪戯でしかないのではないだろうか。
だって親を選べないのと同様に、人間は自分の性を選んで生まれてこられるわけではないのだから

何を犠牲にしても自分らしい生き方を選ぶというのはこういことだ、というのを真っ向からぶつけてくる。そんな美しく苦しい作品でした
ゆ