ゆ

花束みたいな恋をしたのゆのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

美しい花束は美しいまま記憶の中に飾っておきたい。
長い長い五年間の、恋の終わりのお話です

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同じチケット、同じスニーカー、同じ本、同じ映画。電車に乗っていた時のことを「電車に揺られていたとき」と表現する感性。人生の中で自分が大切にしている些細な何もかもが一致する相手。

そんな偶然の重なり合いの、運命みたいな出会いにワクワクしながら少しずつ少しずつ共通点を拾い集めて、ゆっくりと距離を縮めていく。

一世一代の告白が大成功したその瞬間からはもう、僕たちはきっと一生一緒なんだ、きっとこの人が最初で最後の相手なんだって何の疑いもなく信じて、ただがむしゃらに愛し合って、掛け替えの無い日々を積み重ねる。

でも恋愛には賞味期限があるし、パーティーはいつか終わってしまう。
美しい花束だって、やがて枯れてしまう。

人はどうして、余裕が無くなくなるにつれてお互いを慮ることが出来なくなってしまうんだろう。どうして、理解できていたはずの相手の心が見えなくなってしまうんだろう。

別れ際に思わず零れた「結婚すればいい」。その一言に揺らいでしまいそうになったりして、彼の言う通りいろんなことに目を瞑って妥協して、二人一緒に居続ける未来も選べたかもしれないなんて考えてみたりして。

けど、楽しかった思い出だけを抱きしめて生きていくには、もうとっくに時間切れで。
美しい花束を美しいまま記憶の中に飾っておくには、楽しかったあの夜、あの瞬間に幕を下ろすのがきっと正解だった。

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出会いからお付き合い、すれ違い、別れまでの感情描写一つ一つが凄くリアルなラブストーリーで、
同じような恋(の終わり)を経験したことがある人には特に、凄く響く作品だと思います。
ゆ