ぱた

リリーのすべてのぱたのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.2
ここまで希望的であり同時に絶望的な作品があって良いのだろうか。将来、どんなに住みやすくなってもこれが現実だ、と思ってしまう。好きだと思った。

リリーが最期に見た夢について話す直前。
「これほどの愛に私は値しないわ」
恐れなくていいと付け加え、愛するゲルダを優しく突き放してそれでも自由になりたがったリリーの言葉に、心が痛んで涙が止まらなかった。
正直、スカーフが飛んでいくの描写は、あまりにもリリーが可哀想だからつけてあげた、という印象で必要なのだろうかと腑に落ちなかった。

自分よりも知識があるだろうと、半ば自嘲的にも思える希望を持って会いに行った医者からは「同性愛」「精神病」等と言われ、自分の持つものが何と言うものなのか、まだ言葉として普及していない世界(言葉にする必要すら私は以前から疑問に感じているが。)でリリーはとにかく「違う」としか言えなかった。
結局ゲルダは心に寄り添えていても核からの理解はできていなかったように思う。なぜならリリーの中の奥底にずっとアイナーを探していたからだ。
ヴァルネクロスと出会い、第一の手術を受け、女としての日々を日記に綴り、第二の手術から逃げなかったリリーの思い、決別したアイナーの思い。どちらもいつの日か、少しずつでも報われてほしい。

そして、人の世界を自分の知っている世界だけで括ることはしたくない、と改めて思いつつ、この感想もまたそのように括ってしまっていることに私は気づく。
ぱた

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