ミーハー女子大生

リリーのすべてのミーハー女子大生のレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.0
男か女かよりリリーの性格に共感できず…

映像も衣装も音楽も本当に綺麗で、キャストさんの演技も本当に素晴らしかったです。ヌードもありましたが全然いやらしくなく、とても引き込まれて最後まで見ました。

ただ、気になったのはあまりに悲しすぎる展開です。
本当の自分の姿を求めるあまり、破滅してしまったというように見えてなりません。

何をもってハッピーエンドとするか、その基準は見た人それぞれだと思うのですが私自身は「生きてこそハッピー」と思ってしまうタイプなため、最後リリーが適合手術のせいで亡くなってしまうのが残念でなりませんでした。確かに最後は”真の姿”になれたかもしれませんが…。たったの数時間ですよね…。真の姿になって女性としての生活を満喫してほしかったです。ちゃんと生きてゲルダに恩返しもしてほしかった。

また死因は適合手術のせいというよりは、手術を急ぎ過ぎたからに思えてなりません。ゲルダや医師の助言通り、もう少し心身を鍛え、手術に備えてからでもよかったのではと思ってしまいます。男だとか女だとかは関係なく、もうちょっと周囲の意見も取り入れてゆっくり治療に臨めなかったものかと。奇人扱いした医師たちはともかく、周囲の人は理解しようとしてくれる優しい人ばかりなんですから。

中盤にあった百貨店のコスメカウンターに勤めたりする明るいシーンがもっと見たかったです。あのリリーは本当に可愛かった。可愛くてきれいで女性より女性らしくて。数秒の短いシーンでしたが、私はここが一番うるっと来ました。あと欲を言えばリリーになってからの絵が見てみたかったですね…。

星を三つにした理由はリリーの性格に共感できなかったからです。
精神的に不安定なのはわかるのですが…もう少しゲルダを思いやってほしかったです。
決定的だったのはリリーが最初の手術を乗り越え少し回復した頃、ゲルダに「あなたには面倒を見てもらったけど、私は私の人生を生きたい」的なことを言い放ってしまうシーンでした。いくらなんでもあれはゲルダが可愛そう。男性か女性かの問題ではなく、人間としてあまり性格がよくないのではと思ってしまい、ここから感情移入できなくなってしまいました。性の不一致からくる心の不安定さが表れていてリアルだな…とは思いつつ。もしリリーがもっとゲルダを思いやる発言をしてくれていたら、涙腺大爆発していたと思います。

あと個人的に大好きなキャラクターは踊り子のウラです。アイナー(リリー)の変貌にある意味一番寛容で、あっさり対応したのはウラだと思います。(もちろん他人事だからだというのはありますが)
彼女のリリーへの対応は「理解してあげる」というよりは「まあそういうのもアリっちゃアリ!」みたいな軽いノリで、あの時代とあの状況でこういうスタンスでいられる人は素敵だなと思いました。
ゲルダとリリーは様々なことをハンスに頼っていましたが、個人的にはもっとウラに活躍してほしかったです。もうちょっと場を明るくしてくれたのでは…

レビューというよりは私の個人的な願望の垂れ流しになってしまいましたね。
色々文句を付けてしまいましたが、こう思うのも私自身が性に対してわりと自由になった現代に生きているからこその事。この物語の時代であれば、もっともっと閉鎖的な状況でしょうし、感情的になるのも手術を急いでしまうのも無理もないのかもしれません。あと自分の体に違和感を感じながら生きるのは、もしかしたら死んでしまうことよりつらいのかもしれません。

独りで見ましたが、だれか友人と見ればよかったと思いました。見た後色々感想を言い合いたい映画です。最初にも書きましたが映像の美しさや演技のすばらしさに関しては文句の付けどころは一切なく、ステキな映画です。

ストーリー 2
演出 4
音楽 4
印象 3
独創性 3
関心度 2
総合 3.0