りか

リリーのすべてのりかのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.2
ずっと観たいと思いながら、なんとなく重そうでなかなか観られなかった本作。
地上波(たぶん深夜とか?)にやっているものをたまたま見つけて録画。
夕飯終わりに何気なく録画でも観るかと観始めたら最後まで一気に観てしまった。

いやぁ…これはいい作品。
いい作品というのは、わかりやすいとか感動するとか、伏線がー、とかそういうのではなくて、なんというか、とてもリアリティがあって、それでいて映像が美しく、でも哀愁があって、淡々と静かで、その中に人間の複雑な心情を描きながら、最後には脆くて儚くて、優しい愛と生きる美しさを感じさせてくれるような、なかなか見応えがある作品と感じた。
何より彼らの演技が本当に素晴らしいと思った。
エディはLes Misérablesのときからすでに「何、この人すき!」と思っていたけれど、今作はもうなんだろう、リリーという役にピタリとハマっていた!
本当にすごい。途中からちゃんとアイナーからリリーになっていた。
ほんの少しのシーンや一瞬の仕草で、アイナーの中に眠るリリーを感じさせてくれたし、リリーとアイナーの中でもがく複雑さや葛藤を見事に演じられていたと思う。
そしてそれを囲むゲルダ、ヘンリック、ハンス…みんな凄かったなあ。

ゲルダはもう、、、素晴らしいの一言。
アイナー(リリー)に彼女がいてくれて本当によかった。
なんというかやっぱりゲルダに感情移入しちゃうから、とにかく涙がずっと止まらなかった。
アイナーを心底愛しているから、リリーのことも少しずつ受け入れようと努力して、いつもそばにいて守って、アイナーのことを丸ごと愛しているところが、また切ない。
愛している人には変わりないのに、どんどん変わっていく姿に、寂しさも苦しみも後悔のようなものも、いろんな感情が混ざる中で、いつもアイナーとリリーを理解しようと、助けになろうとする姿に胸を打たれた。
いやでも、多分完全には理解もできないと思うし、リリーになることを全力で応援したい、助けたいとも思えてなくて、それでも彼女に最後まで向き合ったのはやっぱり根底にはアイナーを愛しているからであって、彼(彼女)を守る咄嗟に出る行動だったんじゃないかなとも思った。

ヘンリックはわたしの好きな007シリーズのQ役の彼。あーやっぱりお顔が好き。
彼が出てきてアガったし、やっぱりなんか素敵な人でよかった。
ハンスはちょっとお顔立ちからなんとなく警戒していたけど、普通にイケメンのいい奴でこれもよかった。

途中、ゲルダがアイナーに別人になってパーティに出ましょう!と言って、連れ出してドレスやら靴やら一緒に選んであげているシーンですごく泣けた。
今でこそトランスジェンダーなんて言葉があるけれど、当時の方々はどれほど生きづらい世の中だったことだろうと思う。
その中で自分の感情を解放して、一緒にキャッキャしながらドレスや靴を選んでいる瞬間、どれほど嬉しかっただろうって想像した。
あとなんか、このシーンの時にりゅうちぇるとペコちゃんの夫婦を思い出した。
あの2人がテレビに出始めた時は「またやばいやつが出てきた」とか「またおバカタレントか…」と正直に言うと辟易していたんだけど、わたしの穿った見方だったんだなと思うものがあって、最近は彼女たちの発信するメッセージや考え方にはとても共感できるものがある。
それと重なるものがあるなあと思った。

多様性って、一言で言うのは容易いけれど、それを本人や周りの人が受け入れ、理解するまでにはたくさんの困難と、時間と、葛藤がある。
理解しきれることはお互いにないかもしれないけれど、でも理解したい、理解しようとお互いにすることが何より大切なんじゃないかなと思う。
本当に素晴らしい映画でした!

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と思ってたのに、りゅうちぇるとペコちゃん離婚しちゃってめちゃくちゃ悲しい…
なんていうか…
これまんまりゅうちぇるもリリーと同じような道を辿るんじゃないか…?
りゅうちぇるの性自認はまあ誰にも口は出せないけど、結婚観だとかペコちゃんのことを想うと、どうしてもりゅうちぇるお前…とはなっちゃうわなあ…
ペコちゃんは若いけど本当に懐が大きいなあと思ってたけど、まさかこんな運命が待っていようとは…
とにかくいち早くいい男を見つけて息子と幸せになってほしい!!
りか

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