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リリーのすべてのsenatsuのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.0
初めて性転換手術をこの世で受けた男性のお話。
生涯を共にすると誓った画家の夫婦。
夫はデッサンモデルの際の女装で、自分の中の違う性に気づいてしまう。

今まで通りに彼を愛することが、彼を苦しめる。

彼の中の「彼女」を認めていく事は、夫を失うことと引き換え。

この世で一番愛している人と暮らしているはずなのに、愛した人はその人の中から消え、生涯会えることはない感覚。多くの異性愛者も一度は経験したことのある苦痛だと思う。

「彼に会わせて」と、愛しい彼女が泣く。
自分らしくいることが彼女を傷つけ続ける。これ以上自分のせいで愛する女性が傷つくのを見たくない彼。

あの時モデルをさせていなければ、違っただろうか。答えを求め続け、自分を責める彼女は、拠り所を家庭の外に求める。自責の念でさらに行き場のない苦しみを背負う彼女。

彼女を理解し、彼女が愛しているのは彼だと知りつつも、彼女を支え、寂しさの穴埋めに利用されることにも、辛抱強く耐える親友。

どの立ち位置も、人間の性(サガ)が描ききられていて、過去の経験や記憶の引き出しを無作為に開けられ、放り出されるような感覚だった。

「自分が何者かを知らずに生きてはいけない。」台詞が心に残っている。
俳優エディの演じ分けに感服の☆4
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