「天才なだけでは足りない。」
マルコムXの自伝を読んだ後に、この映画に出会いました。
彼の著書を読むと、いかに黒人が虐げられ惨たらしい死を遂げるかなど半生が描かれているため、この映画が扱っている題材の重さや台詞背景により気づくことができました。
黒人が夜中に外出禁止だった時代。天才黒人ピアニストと、金になる仕事を探していたイタリア系白人のロードムービー。
この時代の黒人社会は、面白半分に線路に括り付けられ殺される下層の大衆と、アメリカ文化の駕籠を受けた芸術家の華やかな集団とで二分されていたそうです。
その一部の裕福な黒人芸術家の孤独に対して、白人であるトニーが、
「何が不満なんだ、俺の方がよほど黒い(生活に苦しんでいる)」と咆哮するシーンには、差別は外からくるものなのか己から糸に絡まっているのかを問いかける力がありました。
礼儀正しく物静か、黒豹のような威厳と、貴族の様な気品を供えているピアニストのドク。
高級な背広、完璧なマナーに、言葉使い
そのどれもが彼を守る城であると同時に、白人社会に染まったことを証明する枷でもある。
演奏に招かれた先でも、同じテーブルについて食事することや、共用施設の利用を許されない。
当時黒人が利用を許された施設が載った本<グリーンブック>を渡される。
そこに行っても、黒人からも金品や命を狙われる。
この様な重い題材を扱いながらも、軽やかで笑いが生まれる心温まるロードムービーに仕上げた監督の手腕はすごいですね。
本には、100点を取った黒人の子供が弁護士になりたいと夢を語ると
教師は、大工になったらどうだ黒人には無理だと教え
70点を取った白人の子供が夢を語ると、何にでも好きなものになりなさいと教えられたとありました。
アジア人の大学入試問題も記憶に新しいです。正直、黒人差別を題材にした映画はたくさんあります。それに比べてアジア人の差別を描いた映画は無いに等しく、権利問題は、彼らの戦いに比べてとてものんびりと遅れをとっていることに、不安を覚えます。