曇天

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーの曇天のレビュー・感想・評価

4.5
スターウォーズ一作目の陰の部分。本格エスピオナージをフォースなしの地でいくチームローグワンに称賛!

自分はスターウォーズのキャラよりも世界観が好きだったから、スカイウォーカー家ではない話は歓迎だった。どうもSWとなると子供に戻って自分の中の「こうであってほしい」願望が浮かんでしまって…、今ではepi7はちょっとモヤっとしてます。ただ今回は監督がギャレス・エドワーズだったので一抹の不安はあったんですが、まー杞憂に終わってよかった。ギャレスもゴジラはあれだけどモンスターズは良いのでね。

個人的には凄く良かった。興奮でまだ何を観たのかよくわかってませんが。「SW=スカイウォーカー家」の物語の図式からようやく抜け出せた感があります、長かったなあ。厳密にはこの『ローグワン』も旧3部作へのリスペクトに溢れていて、旧3部作に上手く繋げよう繋げようと頑張っているのですが、『ローグワン』に関してはそのような姿勢だからこそ光る。「この行為が誰かの助けになれば」という奉仕の精神がローグワンにはよく似合う。

要素要素や舞台装置はスターウォーズお馴染みのものが多いけど、それらがスパイアクションの中で自然に機能していて、過剰なファンサービスを感じずに済んだ。アーソ一家の境遇やアンドーを暗殺者と呼ばせていた(簡単に人が殺せる性格)ことの伏線回収とか、あまりSWでは見ない展開が多くて良い。
ドラマ部分が凄く良くて主人公たちは意志を持って反乱軍に尽くしているのに、その上司は信頼とはほど遠かったり、ジンは普段お父さんに会いたいという気持を隠して従事しているのに、いざ会えるとなってもちゃんと報われなかったり…つまり切ない。あんな感動的なホログラムの使い方を初めて見た。

この映画では、戦争ってつくづく、人の住む町を簡単に破壊できてしまうような動機で動いていることを再確認できる。戦時中はしばしば人の住む町や文化的遺産が破壊されるが、本作では「星」がそういった価値あるものの総体として扱われ、星がなくなるシーンは情緒的に映されている。スケールの違いだけで人の命とか、伝統的建築物が無意味な抗争のせいで消えていくのは同じだから。そしてその破壊行為をやめさせようと反乱軍が奮戦し、敵側の機密を奪って人づたいで世間に知らしめようとするさまはホロコーストを思い出した。人と場所と文化をいっぺんに消し去ろうとしたユダヤ人絶滅計画はデススターの機能に近い。帝国は単なる主人公の敵対組織というだけでなく、人道に反する行為を行う虐殺者・破壊者として配置されていたということ。戦時中の後ろ暗い行為は特に秘匿されがちだし。『サウルの息子』では全滅させられると思ったユダヤ人がなんとか事実を知らせよう、ユダヤ人が存在した証を残そうとする描写があったり。『顔のないヒトラーたち』でも思ったが、隠された罪を裁くためには自分から動かなきゃならない時もある。ここではローグワンチームを使って戦時下でも流されることのない意志の高潔さを示している。

やっぱりSW要素も多い。主人公が最初辺境の星にいるとか、ソウ・ゲレラは反乱軍側のダースベイダーに見える。作戦自体はepi6リスペクトを感じた。ターキン(CGすごい)、ベイダー等のゲストもサービスの一環。でも、敵に徴用される科学者とか汚れ仕事ばかりのスパイとかやっぱり戦争要素が多くてシリーズとは別物としても見れる。SW要素も「優しい父親」とか逆に読み替えて使ってる部分もあってgood。
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