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若者はゆく -続若者たち-のsayuriasamaのレビュー・感想・評価

若者はゆく -続若者たち-(1969年製作の映画)
4.0
それぞれの立場で人生が次のステップに進むときの葛藤

佐藤家5兄弟の暮らしぶりを描いた「若者たち」シリーズ第2弾
今回も熱い、熱すぎる兄弟ゲンカが見所ですが、彼らの人生も次の舞台へと進んでいます。また、今回「ミツ」という東北から出て来て、成り行きで佐藤家に下宿している元女工さんが増えます。ミツは、工場である同僚をかばった結果、通告なしでクビになってしまった女性です。

太郎はいつか大きなマイホームを手に入れようと、引き続き働いていて、休みには郊外の土地を見に行っています。
次郎は町子との結婚を視野に入れているのですが、肝心の町子は元カレ(次郎に比べりゃヒョロヒョロの青年)とだらだら続いていてどっちつかずの状態でなやみます。
三郎は就職活動もうまくいかず、急進的な学生運動に身を投げる友人とも切れてしまう始末。そんな中、理不尽な理由で解雇されたミツの復職運動を手伝います。
オリエは戸坂との関係はうまくいっておらず、ある男性からプロポーズを受けますが...
末吉は自動車のセールスマンをしており、日々頑張っています。

本作でも末吉の出番は完全に脇役で、太郎と三郎の「労働」と「頭脳」の対立のようですが、若干前作よりもプロレタリアアート感が増えています。(実際の暴動の映像も挿入されていますしね)その上、前作にはなかった仲代達矢のナレーションが結構効いてきます。堅さというか...

オムニバスストーリーなのでレビューしにくいですが...
まず、次郎やオリエの恋愛模様はそこまでうまくいってないようで、特に次郎は「なんであんなやつに俺は負けてるんだーー」と真っ直ぐすぎる熱い愛を町子に対してここでもみせてます。
オリエの方はわざわざ茅ヶ崎まで探しにいった戸坂とは関係が深まっていませんでした...実は戸坂は佐藤家と確執があったり、「被爆者として立ち向かわない態度が煮え切らない」とオリエも距離をおいていたようでしたが、それらは全て会話で説明されていました。うーん、太郎に怒鳴りつけられる戸坂観たかったなあ(配役的に...)

大きな対立という軸では、太郎と三郎の「金銭」についての確執はキツかったなあ。「兄さんは土地や金にしか興味ない」と三郎が言えば「お前らを食わせるためには必要だ」と言ったり。さらに下宿しているミツとの三角関係?にも陥ったり。最後は太郎もある事件に巻き込まれて寝込むし、三郎もかなり自暴自棄になったりとちょっと不安定でしたね。

全体のテーマもかなり暗い印象でしたね。映画開始すぐ、ミツの同僚がノイローゼになり、精神安定を理由にウサギを飼うのですが、そのウサギもすぐに殺されてしまいます...人間とは、生きるとはという暗い所を抉るような作風。
そんな中、ラストのオリエの笑顔と、オリエが精神的変貌を遂げた戸坂を見つけて寄り添う姿は一服の清涼剤でしたね。(というか、戸坂はここにしか登場しない...)

さて、最後どうなるか見届けましょう。

オマケ:ただでさえ小規模なラピュタ阿佐ヶ谷。お近くの方の結構な頻度で解説を挟まれたりする声や、タオルをパタパタしたりポリエチレン買い物袋がガサガサする音、気になりました..
ちょっと没入できなかったかなあ。(でも救いは本作品に戸坂さんのシーンがあんまりなかったことかな(笑)石立ドラマファン的にですが。)
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