sayuriasama

戦場のピアニスト 4Kデジタルリマスター版のsayuriasamaのレビュー・感想・評価

4.3
芸術に一寸の生きる希望を託して
凄惨な歴史の荒波を乗り越えた1人のピアニストが目撃し、サバイブした戦場

知人が何十回と観て感動した!と熱弁をふるっていたところ、4Kリバイバルがあったこともあり、観て見た本作。結論から言って、正直自分は回数観ることができないですね…つまらないからではなく、素晴らしい傑作であり、かつ戦争の凄惨さと残酷さ、芸術の美しさと力強さに心を打たれたからです。これを気軽に何回も観ることは…

中々感想がまとめられず、今になってようやく投稿できてますが、それほど重く、余韻を残す作品でした。裕福でそれなりの生活から一転、ゲットーヘ強制移住、強制労働、家族との別れ、レジスタンス、ドイツ人将校との束の間の交流…

残酷な暴力シーンと対比するように、主人公シュピルマンには常に音楽があり、ふとしたときにはピアノを奏でるように指を動かす。その静かなるクライマックスは、ドイツ人将校の前で弾いたショパン。(そして、芸術の力強さあふれるラストの演奏。)
そんな美しい音色を切り裂く、突然の爆弾や銃殺の数々が、本当に怖かったです…

WWIIの流れを知っていると、少しは先が見えて辛さもまぎれるのですが、シュピルマンにとっては終わりなど見えないので、本当に息苦しく、サバイバルでしかない姿、エイドリアン・ブロディ迫真の演技で、若くしてオスカー獲得も頷けました。

戦争中にピアノを弾くという行為は、ある種特別な行為であり、封印されるものでありながら、「芸は身を助ける」要素もあったりして、本当に人生はわからないものです。

私の祖母や曾祖母にも戦時中のピアノ(オルガン)にまつわるエピソードもあって、よく祖母に「ちゃんとピアノを弾きなさい。戦争中は自由じゃないから、今ちゃんと練習しなくてどうする」と怒られたのですが、下手の横好きのまま成長してしまいまして…そういった個人的なことも含めて、本当に心を打つ作品でした。戦争は酷い。そして、次なる戦争の火種を起こさないように、人を恨みすぎないことも大事だと痛感しました。

様々な4Kリマスター作品を今年見た(気がする)のですが、本作のリマスター具合は本当美しかったです。オープニングのラジオ局のシーンから透明感がありました。

そういえば、同じ日にマエストロも観ましたが、彼らの1940年代、第二次世界大戦中の過ごし方は天国と地獄ですね…かたや、華々しく指揮者デビュー、かたや、生きるか死ぬかの瀬戸際。
sayuriasama

sayuriasama