曇天

セルフレス/覚醒した記憶の曇天のレビュー・感想・評価

セルフレス/覚醒した記憶(2015年製作の映画)
3.5
ライアン・レイノルズは立て続けに似たような役柄をやってるのが可笑しい。『デッドプール』では人体改造されて醜い面に生まれ変わり、『クリミナル 2人の記憶を持つ男』では死んで他人の脳に記憶を移植されるCIAのスパイ役。この『セルフレス』では病気の老人の意識を移植される死体役。いかにも「死の淵から別人となって蘇る男」っぽい顔をしていると言われれば、なんだかそんなような気がしてきたぞ。

他人になり替わり、なんて設定も使い古されてる気もするが撮り方が面白く、語り出しは静謐、内容も二転三転してきちんと飽きさせないつくり。演出がセンス良くて今っぽくてカッコいいなーと思ったらターセム・シンかい。『ザ・セル』では頭抱えさせられた思い出。他の映画は観てなかったけどエンタメ路線で観やすいものも作ってたのね。瞬間的な幻覚や視界が揺らぐシーンのVFXとか本当にありそうなリアルさで不安を煽られる。アクションも多め、夜のカーチェイスがカッコいい。
よくわからん現実に無い技術を使っているので独自の設定に違和感が湧いてもしょうがないんだが、それを脚本で生かすような形ではある。

若い時にあくせく働いて、大金を手にした頃には年を取ってしまっていて楽しみが無い、という哀しさはよく言われる。今回はなり替わる人間が元軍人だったから戦闘能力を持っていたが、別の人間なら別の映画にもできそう。アクション映画じゃなくてもいけそう。そう思うくらいに、金を持て余した老人達の哀愁が強く描かれていた。怪しい事業に投資したり、膨大な禁止事項に辟易したり、詐欺に遭ったと気づいた時には既に手遅れ…なんて落とし穴はありがち。老後だからっておちおち気を抜いてはいられないのだ。死ぬまで安らぎはない、というテーマは『最高の人生の見つけ方』等へのアンサーなんではないか、とはさすがに深読みしすぎか。対比としてのもうひとつの家族の存在も格差の際立つアメリカならでは。

思わぬ拾い物でした。ボーンシリーズかペイチェックのようなジャケで大分損してる。強いて言えばやはりアクションと老人若返りの組合せがちょっと強引なのか。ただの軍人が戦闘能力スパイ並だし。
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