月うさぎ

二ツ星の料理人の月うさぎのレビュー・感想・評価

二ツ星の料理人(2015年製作の映画)
3.5
アダム・ジョーンズは完璧主義者のシェフ
料理も人も不完全だと許せない。自分をも許せない。

原題 Burnt 燃え尽きた?やけど???
それにしてもまたまた邦題の「二つ星料理人」というタイトルは的を外しています。本作はもっとヒリヒリした物語です。

キーワードは「7人の侍」!?
“You ever see that movie The Seven Samurai?,” “That’s how I want my chefs to be.”
でもその意図がちょっとよくわからない…
別にオマージュでもなかった気がするんですが。

創造的な調理法でリースの店は、三つ星レストランの名声を手にしていた
「フライパンも炎も君と一緒に消えた」
アダムは旧時代の「時代遅れ」のシェフだと宣告される

おおお、星野リゾートみたいだ!
あそこの料理は温めたり飾り付けするだけって話だ。
真空パックの低温調理器具を導入って
フランス料理よ、本場がそういう事なのか…
長年の勘や熟練の手際の良さは不要なのか?

「トニーはアダムを愛してるわ」

えー?いきなりそういう設定ですか?!ビックリしました。

このトニーがとてもいい奴なのよ。
演じるダニエル・ブリュールは揺れる心や迷った表情がとてもうまい。「グッバイ・レーニン!」でも「イングロリアス・バスターズ」でも「黄金のアデーレ」でも印象に残る表現をしていました。
私、彼、好きかも❤️

彼がいる事でこの映画は救われてる。

そうでなければ、特殊な才能のあるイケメンはどんなクズな野郎に落ちぶれても男からも女からも敵からも愛されちゃう、というただ主人公にとって都合のいい話になってしまうから。

ブラッドリー・クーパーってそういう役が多くないですか?
しかし暴力的でパワハラな言動をする人の心の読めない男に、自立した女が簡単に惚れるかね?私ならトニーの方が好きだけどな。

この映画は感動は薄いです。

アダムが挫折と絶望の淵から立ち直る。
それが人の助けによるものだとすれば
心を開いて、人を受け入れるように変わっていくアダムの心の動きをもっと繊細に描いて欲しいし、彼の料理人としての素晴らしさを伝えたいなら、彼が引き抜いてきたデイビッドをもっと指導するシーンがあっていいと思うし
(女料理人とばかり絡んでる)
別れた(捨てた)女さえ彼をまだ愛していて、見返りも求めずただ献身的なだけっていうのは、却ってじゃまなエピソードだと思う。

とにかく、フランス料理の世界では一流シェフのお墨付きを得るために、熾烈なライバル関係があり、闘いのための「強靭なメンタル」が要求されるってことはわかりました。
スタッフとの連携や出資者との関係やマスコミへの報道売り込みや批評家の残酷な仕打ちなど、映画とよーく似ている世界なんだという事も。

強いから人に頼れるの
弱いからじゃない

このメッセージ、もっと上手く伝えてほしかったな。
月うさぎ

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