TOSHI

モヒカン故郷に帰るのTOSHIのレビュー・感想・評価

モヒカン故郷に帰る(2016年製作の映画)
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レンタルで再度鑑賞。オバマ大統領の訪問、広島カープの優勝と、広島イヤーだった今年、ゴリゴリの広島映画である本作が公開されたのも、偶然ではないかも知れない。観た後で知ったが、舞台の瀬戸内海の島は、実在の四島を架空の「戸鼻島」として撮影した物との事。酒屋の店主である父親役・榎本明が、顧問をしている中学校の吹奏楽部に、心酔する矢沢永吉の、「アイ・ラブ・ユー、OK」の演奏を強要するのが笑える。この、「YAZAWAは広島県民の義務教育です」という感性についていけないと、この映画自体キツイかも知れない。7年振りに帰郷した、デスメタルバンド・断末魔のボーカルをしている、永吉という名の息子役・松田龍平が、ケンカの後、父親がガンである事を知るが、親との死別という重いテーマながら、どこまでも軽妙に撮り上げているのが、沖田監督ならではだ。重過ぎず、浮かれ過ぎず漂う物語が、瀬戸内海の島というロケーションとマッチしている。また妊娠しているフィアンセ役・前田敦子が良い。彼女はこういう少し頭の回転が遅く、投げやりな感じの役をやらせると抜群だ。父・息子の関係がメインテーマだが、前田敦子ともたいまさこの嫁・姑の関係が、裏テーマと言える絶妙な絡みになっている。終盤まで抑えた笑いが続くが、クライマックスの「断末魔〜」で爆笑した。生きていればそれで良く、難しい話はしたくない家族が、一大事に立ち向かう姿に、笑ったり泣いたりしながら共感できる良作だ。
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