トム・クルーズの映画は大概観ているつもりだったがこの映画を知らなかった。アマプラ見放題終了間近ということで偶然知ることとなった。
【ネタバレあります。】
1970年代後半、アメリカはベトナム戦争に敗北し、メキシコから南アメリカの国に共産圏が拡がりを見せていた頃の話だ。
アメリカは反共産組織のコントラに武器を供与して共産勢力拡大を食い止めようとしていた。しかし空港は軍に押さえられ空港ではない所に着陸するのは容易ではなかった。
そこでCIAが目を付けたのは大手航空会社の優秀なパイロットのバリー・シールだった。1度運ぶ度に多額の報酬が得られるこの仕事をシールは引き受ける。
(この辺りまで観て何だかトム・クルーズの映画というよりディカプリオの映画みたいだなと思った。こういう泥臭い役がトムには似合わない気がして…。トム・クルーズはとても上手く演じてはいるんだが…。流れている曲もディカプリオの映画にありそうな曲で…。)
無事に武器を届けることに成功するが帰ろうとするシールは麻薬を運んでくれないかと頼まれる。「いやいやいや、そんなことをすれば税関ですぐに捕まる」と断ろうとするが、そこでシールはいい方法を思い付く。
ルイジアナに運んで湖に落とそう!話はまとまり行きと帰りの両方で2度美味しいとシールは目論んだ。
しかし、いざ飛行機に荷物を積み込むと「もっと積み込め、まだ積み込めるだろう。」と無理強いされそうになる。場所は空いていても重さが駄目なんだと説明しても中々理解してくれない。今までのパイロットはみんな失敗して墜落したというのに下手だからと思っているらしい。
(相手のレベルが低いので凄く恐い気がした。CIAに関わるのも止めておけばいいのにと思ったがマフィアの様な連中に関わるなんて飛んでもない話だが欲に目が眩むとはこの事だ)
ルイジアナに無事に荷物を落としたシールは大金を手にする。1度成功してしまえばハードルは下がり、何度も往復しながらお金を手にしていく。置くところがないからあちこちの銀行に口座を作った。
ある日マフィアのアジトに警察が踏み込みシールも捕まってしまう。CIAにより牢から出たがもっと大変な仕事を頼まれる事となる。
CIAはシールが密輸をしていることを把握していたがシール程の腕のいいパイロットが他に見つからないので黙認していた。シールにルイジアナの家と土地を与え飛行場まで作ってくれた。
家族と共にルイジアナに移住したシールの家に妻の弟が転がり込んでくる。
少し脳に障がいがありそうなこの弟が困り者なのだが妻は弟を可愛がっているため追い出すことも出来ない。このシールという男、とにかく妻を愛していて大事にしている。
(それならヤバイ話には乗らずパイロットしてれば良かったのに。大金持ちにはなれなくても何不自由なく裕福に暮らせていたというのに…。)
弟は教えられたことを守れない(覚えられない)。家に大金が置いてあったり武器が倉庫に沢山保管されていたりするのを見てしまうが誰にも言ってはいけないと言い聞かせてもいつ喋ってしまうか分からない。それでもシールは弟を決して切り捨てようとはしない。愛する妻が可愛がっている弟だから。
やがて恐れていた事が起きる。弟が警察に捕まったのだ。弁護士に任せろ。何も喋るなと言い聞かせると絶対何も喋らないよと言うが…。弁護士に任せて大人しくしていられるか凄く不安。
【ここからラストまで完全ネタバレします。未見の方はご注意下さい。】
マフィアが手を回して弟は警察から出られたがマフィアは処分してやると言う。「NO、NO手を出さないで。大丈夫だ。僕の方で何とかするから。」シールはマフィアに何度も念を押すが…。
シールは弟に偽のパスポートを用意してお金を持たせて逃がそうとする。弟はシールの気持ちに気付きもせず、「お金をずっと送り続けるんだ。でないとばらすぞ。」とシールを脅す。
シールは呆れ果てるが弟を送り出す。が車にはマフィアにより爆弾が仕掛けられていた。
(マフィアがこちらの言うことを聞いてくれないのが恐い。どんなに仲良さそうにしていても友達ではない)
その後もCIAとマフィアの手先となり仕事を続けるがコントラがアメリカから援助して貰った武器を反政府活動に使わずコロンビアに横流ししていたことが判明。
CIAも政府から咎められそうな気配。シールに接触して指示していたシェイファーはCIA内にあったシールに関する全ての書類を処分した。シールとCIAには何の関わりもないと。
やがてシールはアメリカ軍により捕まり財産はみんな没収された。
シールは妻に言う。
「出来るだけ多くの宝石を身に付けるんだ。身に付けているものは没収されない。それで君と子供は暮らせるだろう。僕は牢に入れられるだろう。」それを聞いた妻は毛皮を脱ぎ捨て宝石を取り外し出す。「No! No! 何をしてるんだ。」「決まってるでしょ。一緒に行くのよ。私達は家族なのよ。」
(何処までも妻を愛して気遣うシール。シールもシールなら妻もまた健気。泣かせるではありませんか。)
取り乱す妻を説得し宝石を身に付けさせて逮捕されていった。牢屋から1度だけ電話が許される。シールが頼れるのはCIAのシェイファーのみ。電話をかけるが「その番号は使われていません…。」
シールはCIAに切り捨てられた事を知る。シールは長い牢屋生活を観念する。
裁判が始まり判決が下された。120日の奉仕活動に処す。
狐につままれたようなシール。しかし出所したらしたで恐い。密輸の写真を撮ってマフィアを裏切ろうとしていたから報復に来る懸念。もう1つはCIA。秘密を知っているものをCIAがそのままにしておく筈が無いのだ。
シールは毎日違うモーテルに泊まった。そして毎日裁判所の命令通り奉仕活動に通った。駐車場から車を出す時にはエンジンをかける前に必ず近くにいる人に「離れて。」と声をかけた。弟の様になるかも知れないから。
(悪者なのに何処か好い人。)
ある日シールが車に乗り込むと近付く人影。手にはライフル。この後画面は真っ白になりライフルの音らしき音が聞こえる。
エンドロールで各々のその後がでてくる。
シェイファーは昇進。
他の5人のパイロットは行方不明。
(他のパイロットもシールと同じ運命をたどったのだろうか?シェイファーが憎たらしいなあ。)
妻はルイジアナに戻り、カフェで地道に働いている。end
この映画は実話である。シールは実在のCIAの職員であった。ベトナム戦争が終わり4年後イラン・イラクの戦争が始まるまでの物語である。
アメリカはこの後、イランのコントラに軍事支援を行って再び戦争に加担して行く。シェイファーはその指揮を取った。
妻の弟を演じているのがケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。
この間リュック・ベッソン監督の最新作『DOGMAN ドッグマン』で主役として最高の演技をしているのを観て今後注目しようと思った所だったのでいきなり出てきて驚いた。
この映画でも少し脳に障がいでもありそうな弟を非常に上手く演じていた。やっぱり演技力がある俳優だと思った。
なおリュック・ベッソン監督の次回作もケイレブ・ランドリー・ジョーンズに決まっているそうで楽しみにしている。