Yui

アイヒマン・ショー/歴史を写した男たちのYuiのレビュー・感想・評価

4.2
1961年、元ナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンの裁判が開廷された。「ナチスがユダヤ人に何をしたのか」TVプロデューサーのミルトンとドキュメンタリー監督のレオはこの真実を全世界に知らせる為、裁判を撮影しその映像を世界へ届けるという一大プロジェクトを計画する。

ナチスがどれだけ残虐な事を、どれだけ多くの人にしてきたのか。ヒトラーだけではない、その残党や差別意識を持った人は実際にいる訳で、1960年代にアイヒマンの裁判をテレビでって…どれだけの覚悟や勇気が必要だっただろう。正に命懸けだったと思う。そして今もその映像が残っている事、今観れる事がどれだけ貴重な事か。歴史の中の残虐さと偉大さを同時に観たような気持ちになって、今胸がいっぱいです。

ミルトンとレオの第三者という立場があるからこそ、感情移入出来て観やすかった本作。レオの込み上げてくる怒りや悲しみ、葛藤が自分の感情とリンクして後半涙が止まらなくなった。

そして、やっぱり裁判の映像。
映画の映像に、実際の映像を挟み込むのでリアルさが本当に凄い。実際のアイヒマンは無表情で冷血そうに見え、感情が読み取れなかった。彼は本当に感情のないモンスターなんだろうか…そんな人いるのかな…ってずっと考えていた。

証人には何人もの被害者たち。話を聞いているだけでも、とにかく想像し得る限りの悲惨さで、想像以上の残虐な行為の数々。映像も出てきますが…言葉を無くします。もはや人ではなかった…。人の扱いをされていないんだから、そう感じるのも当たり前なのかもしれないけど、絶対に無感情なんかでは観られません…。辛かった…でも、目を背けず観られて良かったとも思いました。

ラストの言葉、問いは、自分の胸に手を当てて考えてしまう言葉だった。誰でもアイヒマンになりうる現実。是非観て、皆さんも自分の胸に手を当てて考えてみて欲しい作品です。

戦争が終わったからって、時間が過ぎたからって、終わりなんてないんだなぁ。


2021-240
Yui

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