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奇蹟がくれた数式のundoのレビュー・感想・評価

奇蹟がくれた数式(2015年製作の映画)
3.9
才は天から授かり、地にて花開く。

実話。
第一次大戦下のイギリスにおいて、名門ケンブリッジ大学で才能を開花させた天才数学者、S・ラマヌジャンの生涯と、彼の理解者である、もう1人の天才数学者G・H・ハーディの友情を描く。

数学の公式を見ただけで頭がクラクラしてくる、完全文系人間の私にとっては全くなじみのない方々のお話だけど、どんなジャンルでも天才の活躍は見ていて気持ちが良い。まるでウィル・ハンティングのように難問をスラスラと解いていく。あっちは架空だけどこっちは実在の人物というところがたまらない。

天才は天才ゆえに他の人とどこか違うものだけど、理解を示してサポートしてくれる友人がいることで真の力を発揮する。才能を見抜く才能。

あれ、こういう映画を最近映画館で見たぞ。そう、「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」だ。文学と数学の違いはあるけれど、年の離れた心の友とも言える理解者がサポートするところや作品の落ち着いた雰囲気がなんとなく似ている。そして才能を開花させる手法も。

ラマヌジャンは上記のように天才的な閃きで公式や理論を生み出すのだけど、それを証明できなければ認められない。直感だけでは人類が共有する知的財産ということにはならない。それをサポートしていくハーディ。

余談に近いが、こうした作業は、数学に限ったことではなく、学問と言われるものが必ず負う宿命。私が学生時代に学んでいた文学では、作者はこういうことをこの作品で言いたかったのだ、ということを作者の日記や手紙を使って証明しなくてはならない。私もこの作業がとても苦手だった笑 どうしても野暮な気がして。私が文学を学問と割り切れなかったということなのだろう。
もし映画を学問とする場合、監督の生い立ちから論文を始めなければならないのだろう。

実話ゆえに、劇的なエピソードや痛快な展開を期待すると肩透かしをくらいそうだけど、こういう才能の持ち主がかつて実在したということや、人種や信仰の壁を越えて、互いの才能に敬意を払う男どうしの静かで熱い友情をじっくりと堪能できる良作だと感じた。
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