賽の河原

ラ・ラ・ランドの賽の河原のレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
3.2
予告の音楽とか衣装とか色とか含めたルックのオシャレさから物凄い期待感を持って鑑賞したんだけど、予告の期待ほどにはあんまし楽しめなかった、というのが感想。
高速道路のシークエンスなんか撮り方含めて予告通りに凄すぎ。パーテイーに向かうシーン凄すぎ、パーテイーのシーン凄すぎ、エマストーンもライアンゴズリングのシーンも2人ともとても動けていて凄すぎ。
序盤のミュージカル仕立てのシーンはどれもワンカットで見せてライブ感を出しつつ、ワンカットの気持ち悪さや違和感を感じさせないテクニカルなカメラの動かし方で圧巻。序盤の方は「これはとんでもない映画かもしれねーぞ...!」という期待感が半端じゃない。
ただ、天文台のシーン以降は正直退屈だったかなあ。特にプラネタリウムのシークエンスとか、「ミュージカル映画でもこんな風に技術的アップデートできるんやで!」みたいなのが鼻についたなあ、これもオマージュなんだけど。
そう見ると話としても映画の作りとしても実は序盤と中盤以降のつくりはかなり歪な作品だよね。あとはジャズを熱心に語るシーンやらなにやら映画業界そのもの隠喩的に相対化してるようにも見えるあたり、チャゼル監督の作家性も強く滲んでるように見えますね。
映画の主題としては「夢」とも「喪失」とも取れるんだけど、エマストーンもライアンゴズリングも夢破れても全然やってけるじゃんって感じがしちゃう。エマストーン、大学出てない女優志望なのにプリウスなんか乗っちゃってさ、「実家太そうでいいっすね」って感じ。ライアンゴズリングも別にあのバンドで食ってけるくらいのスキルがあるわけで。
そういう意味では「持たざるもの」のお話じゃないし、努力も質量ともに限定的なため最終的に「良かったね〜!」っていうカタルシスが全然ないわけですよ。「持ってる人間」が「自己実現したけど喪失したものもあるんすよ...」みたいなレベルの喪失感。そういう意味では「映画評論家」みたいな持ってる人たちには響くだろうけど、俺みたいなパンピーとか、これから夢に挑む人にとってはあんまし響かない。むしろ「こんな自己実現しても失うものあるのかよ...」的な不吉さ、イヤな感じを私は感じましたね。夢追い人にはある種の残酷な現実を突きつけてくる感じで、こんなんちょっとキツいから観たくないわっていう。
まあそれも含めた酸いも甘いもラ・ラ・ランドなんだよ!と言われりゃそらそうなんだけど、それが面白いか?と言われると私はそんなに面白いとは思えなかったですね。書き忘れてましたけどタイトルが出てくるまでのオープニング、感動的に最高でしたね。観たらグラセフしたくなりました。
賽の河原

賽の河原