TAK44マグナム

探偵ミタライの事件簿 星籠の海のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

1.2
いくらなんでも天才すぎ。


新本格ミステリーの旗手と言えば島田荘司。
一時期、すごくハマりましてね。
90年代中期までの作品の殆どは読み漁りました。
でも、2000年代以降はさっぱり分からんので、本作の原作は未読です。
「アトポス」や「眩暈」あたりまでは長編も短編も、御手洗潔シリーズは既読。

吉敷刑事シリーズも好きでしたが、やはり島田荘司と言えばIQ300の天才、そして変人の御手洗潔が友人の石岡と共にこの世のものとは思えない難事件を解決する探偵御手洗シリーズでしょう。

どうやら東野圭吾のガリレオと比べてパクりのように思っている方もいらっしゃるようですが、御手洗もガリレオも、全ての天才型探偵はシャーロック・ホームズの時代からのスタンダードであって、ああいったエキセントリックさを前面にだした人物造形も昔からあるものなので、別にパクりではないし、なんなら御手洗のほうが世に出たのが早いですよ。

しかし、御手洗シリーズ、というより島田荘司作品は映像化の数でいうとネームバリューの割にそんなに多くはありません。
なので、御手洗潔?誰それ?という世間の反応になってしまうのでしょう。やはりドラマや映画の影響力は絶大でありますから。

では何故、島田荘司作品の実写映像作品は少ないのでしょうか?
それは、個人的に思うに「あまりにも壮大で、荒唐無稽なトリックや事件ばかりだから」なのではないでしょうか?
怪奇趣味や歴史、SFなど、ありとあらゆるジャンルをごった煮にした不可能犯罪を描くことが多く、そのまま映像として見せてしまうと、よほど上手に処理しない限り非常に陳腐になってしまう危険性をはらんでいると思うのです。
「斜め屋敷の犯罪」や「奇想、天を動かす」などは、きっと実写化の鬼門だと思います。
絶対、トリックを暴いた途端、あまりの陳腐さに苦笑いするしかなくなりますよ。

そんなわけで、島田作品は小説で読むとメチャクチャ面白いし、トリックの凄さに感激しますけれど、もしかしたら映画では奇天烈すぎて思わず笑っちゃうのではないかと、観る前からすでに不安でした。

で、その不安はよせばいいのに見事に的中しちゃいましてね。
ミステリー映画として、メチャつまらない。
メインとなる謎は、瀬戸内に現れる謎の首長竜なのですが、ビジュアルでみせちゃうと正体にすぐ気づいてしまうし、とにかく安っぽさが酷いことになってしまって
います。
そんなだから折角の泣かせるクライマックスも、まるで盛り上がりません。

登場人物も誰一人、感情移入ができず仕舞い。
御手洗(玉木宏)は何だかロボットのようだし、オリジナルキャラクターの小川みゆきに至っては広瀬アリスに罪はないものの、完全に要らないです。
ドラマ版の堂本光一が出られないから石岡が出ないというなら、キャストを変更すれば良いのでは?
ギャグなのでしょうが、広瀬アリスがマイクもって「犯人に告ぐ」をやり出した時にはどうしてくれようかと思いましたよ。
そのほか、刑事もみーんな紋切り型だし、犯人の描き方も かなりショッパイので、こんなんでは全然エモれない!
薄い!全てが薄い!
みんな書いてますけど、本当に2時間ドラマ並みでしかありません。


御手洗があまりにも天才すぎて、謎が謎じゃなくなっているのも、なんだか白けちゃいますよね。
謎解きのカタルシスがないのは本当に致命的。

書評をいくつかチェックした限り、映画化を前提として書かれた原作からして多くのファンから不評をかっていたようですので、そもそも原作が従来の御手洗モノより数段落ちる出来・・・なのかもしれませんな。

玉木宏のイケメンぶりに萌えるファン向けであり、ミステリー映画として観るのはオススメ致しません。


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