さいとう

500ページの夢の束のさいとうのレビュー・感想・評価

500ページの夢の束(2017年製作の映画)
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„物語“が好きな全ての人に向けた物語

というか、何か好きなもの、好きとかそういう次元を超えて自分の支えがある人に向けた話だと思う。

他人から見たらただの趣味程度にしか見えないかもしれないけど、自分にとってはそれが生きていくうえで核になっていることもあったりする。
(観ながら、エンタメは“不要不急“論を思い出したり。)

そのもの自体の魅力を理解できなくとも、そんな存在があることに共感できるようになりたいし、私も大切なものと一緒に成長したいと強く感じてしまう。
だからこそ、ラストの警察官がめちゃくちゃかっこよかった、、

あと、ウェンディとお姉さんのやり取りがすごいぐっときた〜。
ウェンディを大切に思う気持ちは大前提として、でもどうしようもない葛藤とか苦悩とか、綺麗事では済まない部分が最後まで残り続けている。

邦題は「500ページの夢の束」だけど、原題は「please stand by」
この“please stand by“は『スタートレック』に登場する台詞でもあり、劇中ではウェンディが自分を落ち着かせるときに呪文のように唱える大切な台詞でもある。

映画を観終わったあと、監督のインタビュー記事を読んだらこのタイトルについて、「タイトルは語り継がれるものであるから、言葉にしたときの語感を大切にした」的なことを言っていて、すごく印象的だった。

邦題も物語が持つ希望みたいなものを表してるとは思う。
だけども、“please stand by“に込められた意味やウェンディに寄り添う言葉であること、何よりまさに声に出して言いたくなる台詞としての力があるのに、副題的なポジションに落とすのはもったない。

翻訳があるから今の私は沢山の物語に触れられるのだけど、やっぱり翻訳なしで外国映画を観られるようになりたいと思う今日この頃。

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自閉症を抱えるウェンディは訳あって姉と離れ、施設で生活を送っている。あるとき、ウェンディは大好きな「スタートレック」の脚本コンテストに応募することを決めるが、郵送での締切に間に合わせることが出来ず、自分で数百キロも離れたスタジオに脚本を直接持ち込もうと決意する。