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サクラメント 死の楽園のumihayatoのレビュー・感想・評価

サクラメント 死の楽園(2013年製作の映画)
5.0
1978年、ジム・ジョーンズ率いるカルト宗教団体「人民寺院」が南米で作ったコミューンで集団自殺をする。
死んだ信者の数は918人。
その事件をモデルにしたモキュメンタリー映画。

教祖の話法を笑えない現代。
話ははぐらかされ、それっぽいことを言われ。生き方や価値観を否定され。
メディアや歴史教育は嘘だと言われ。
陰謀論を喧伝し。
「楽園」の定義を押し付けられ。

個人の生き方や死に方。
それらを選択する判断基準となる価値観。
これらを矯正・強制したり人と共有しようという押し付けや教義、生き辛さを感じて助けを求める人々の気持ちを利用して儲けるなど"悪"そのものです。
だから社会はそれを"カルト"と呼ぶ。
言ってしまえば全ての宗教はカルトだ。
僕はそう思う。

そしてもう一つ"カルト"と呼ばれる働きに
「理想や価値観を共にしている集まりこそが共同体だ」という幻想がある。

僕もヒッピー文化に憧れたことがあった。
そっち界隈の音楽にハマり、本当に小さなフェスやレイヴに行った。
どこかの土地で自分達だけの村を作り、そこで自給自足すればいいんだという小さな共同体での楽園幻想を信じていた。
しかし、コロナ禍でそちら界隈への憧れは一気に崩れる。
なぜなら堰を切ったように、皆が上に記した教祖の様な発言をし始めたからだ。

自分達が既存の社会では異端で、排除されていると感じ、だからこそ特別で、今押し付けられてるものでは無い新しい価値観の社会を作れると本気で思っていた。

でもそれって実は僕達こそが他を排除し、価値観を押し付けようとしていたに過ぎなかったんです。
そんなものは「共同体」ではない。

映画自体は低予算気味で、展開も見たことある感じだし、映画的カタルシスには欠けるけど、今考えるべき事は沢山詰まってる作品でした。
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