umihayato

結婚のすべてのumihayatoのレビュー・感想・評価

結婚のすべて(1958年製作の映画)
5.0
岡本喜八、初長編監督作ながらも
初っ端から「これぞ喜八!」と思えるカットの速さ、切り返しカメラワークの妙など、この時代には考えられなかった表現で、まさに時代の転換期の勢いと混沌を爆発させた様な傑作!!

「結婚とは理性か情熱か?」という一つのテーマに、世代による価値観の移り変わりや自由恋愛と家父長制の対決なども盛り込み
登場人物にも
プレイボーイな秀才
貞淑で欲求不満な妻
実存を教えるも若い世代の実存主義にはまるで理解を示さない教授
と、時代や個人の相反に次ぐ相反に、この時代の混乱とそこから立ち上がってくる個人のパワフルさを見る。

およそ多くの人が考えつくであろう結婚に対する疑問を全てぶち込んだ上で、『個人の幸せ』は全肯定する恐るべきまとめ能力と、既存の「結婚の作法」の押し付けに対する反抗(元祖マッチングアプリと言えそうな結婚相談所のシーンはとても良かった)に、喜八の視点の広さと反骨精神を感じるし、なにより政治や制度が家父長制に逆戻りしてきてる現代の方が遥かに窮屈で遅れているのではないだろうかと思ってしまった。

しかし、やはり時代が時代なので事実婚や同性婚などへの言及はない。
もし喜八が現代の「結婚のすべて」を作ったらどうなったのだろう。

ナレーターだけの小林桂樹
一瞬出てくる顔のでかい三船など
サプライズもかなり嬉しく楽しい作品でした
umihayato

umihayato