設定こそとてもスリリングだけれど、物語が進む中ではそれほどドラマティックな展開はないように感じた。ただ、ニーナ・ホス演じる主人公が、どれほど深い傷を心に負っていることかと想像させられて、とても苦しい。
「東ベルリンから来た女」とも「誰よりも狙われた男」とも全然違うニーナ・ホス。中盤までの化粧をしていない顔は、いつも何かに怯えるようにこわばっている。しかし、濃いメイクを施して、「不死鳥」のように「生還」するときには、表情から怯えは消え去り、決意に満ちた顔になった。圧倒される。
ラストの♪Speak low♪がなんとも沁みる。