TAK44マグナム

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3.0
這い上がれるか?


何事も始まる前のひとときが最高なんだと語る、「始まるまでのサクセス青春ストーリー」。


EDM(エレクトロダンスミュージック)のDJとしての成功を夢見る青年コール(ザック・エフロン)。
クラブ経営者や俳優などを目指す仲間たちとつるんでは、ノーギャラのDJプレイで修行&夜遊びをする毎日に明け暮れていました。
ある時、有名DJのジェームスと知り合ったコールは、そこから道が開けそうになりますが、ジェームスの秘書兼ガールフレンドのソフィーと一夜を共にしてしまったことから、再び道が閉ざされてしまいます。
更に追い討ちをかけるような悲劇に見舞われ、未来も仲間も失いそうになった時、コールに残されたものはEDMでした。
コールは自分だけのオリジナルを模索し、ついに完成した曲で勝負に出るのですが・・・


目指す成功や持ち得るスキルに違いはあれども、こういった青春映画は、それこそ掃いて捨てるほどありますね。
ガワは確かに今風のサブカルチャームービーしているし、なんといってもEDMがかかりまくりなのでノリも悪くない。
ビジュアルが妙に凝っている上に、パーティやフェスの場面はアゲアゲ↑↑(特にラスベガス)でグルーヴ感も多少なりとも感じられました。
しかし。
掃いて捨てる中で他より目立てる要素、つまり映画としての「武器」は音楽という形で存在しているように見えますけれど、主人公にとっても武器な割には「人をアゲるには心拍数がどうたらこうたら・・・」というウンチクを披露したり、ジェームスと一緒に曲を製作する場面以外はそこまで音楽漬けの映画でもなかったなと言うのが正直なところ。
そもそもEDMという音楽の特性が、ミュージカルナンバーのように心情を伝えるには適さない。

また、語りたい事を詰め込みすぎたのか、観終わるとどうにも散漫な印象しか残りませんでした。
そのせいか、本来なら全身が震えたであろうサマーフェスでの爆発的エモーションも感じられず寂しかったです(観客がアガるところは少しゾクリとしましたが)。
もっとアドレナリンを放出させてくれないと!
残念ながら、それにはドラマの積み重ねが足りていません。
簡単にデキてしまうコールとソフィー。
突然に起きる不幸。
仲間たちの若さゆえの葛藤や、ジェームスが抱える不安などもチラ見せ程度。
登場人物ひとりひとりに無駄な肉付けをしようとして失敗しているような気がします。
肉付けしたはずなのに、オシャレな演出や編集が足を引っ張ってしまっているのか、逆に薄っぺらくなってしまっているのが良くない。

仲間たちとの友情や別離。
ジェームスとの師弟愛や確執。
ソフィーとの恋愛。
夢と現実。
それぞれにフォーカスをあてようとして、結果的にどれも中途半端になってしまい、最後までグッと胸に迫ってはくれませんでした。
特に仲間たちとの友情は、他の優れた映画と比べると酷なもので、あまり絆を感じられなかったのはキツい。この部分が、最後のフェスで盛り上がるために一番熱くないとならないのに(平たく言えば泣けない)。


本当のフェスの最中に撮影したクライマックスはさすがの臨場感で、ザック・エフロンのDJぶりも様になっていました。
全編出ずっぱりなので、彼の人懐っこそうなルックスとマッチョなボディが目的なら楽しめると思います。
それと、DJはこうやってプレイしたり曲を作っているんだとよく分かるのは興味深かったですね。

もう少し青春のほろ苦さに浸りたかったのですが、アメリカ西海岸のカラッとした雰囲気が湿り気を遠ざけているような、そんなシャレオツで、とにかくザック・エフロンを愛でるための一作。

劇中の「始まる前のひとときが好き」という台詞は映画にも当てはまる時があるかと思いますが、本作がまさしくそれに当てはまったのは皮肉でした(汗)。


NETFLIXにて