砂

ロブスターの砂のネタバレレビュー・内容・結末

ロブスター(2015年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「聖なる鹿殺し」から遡る形で。ヨルゴス・ランティモスという人は本当にねっとりした会話とにじみ出るような変態性が随所にみられる。
本作もまったく奇妙な映画だった。各転換点において、「嘘」がキーワード。

独身者は罪であり、45日以内に相手を見つけられなければ動物に変えられてしまうというホテルに(強制的に?)住むことになった主人公。
前半はそのホテルでの奇妙な生活の顛末が描かれる。なぜか森の中で人をハントすると滞在可能日数が増える。細かな説明はされないが、細かなナレーションがなんともシュールである。
滞在可能日数が刻々と減る中、あせりもあったのか主人公は「血も涙もない」女を選ぶ。無理やりその女の無味乾燥なスタイルに合わせるが、兄(であった)犬を惨殺されサイコな解説をされたことで、糸が切れたように女から逃亡、動物に変えたという。そしてホテルからも逃亡する。

中盤からはそのナレーションが実はメインヒロインのものであることが判明する。そして主人公は狩られる側の立場となる。そして狩られるグループと思っていた人たちは、意識的に森で独身者としてのルールを持った自律的な人たちの群れであった。管理された文明的・強制的な2つのグループ。一方は恋愛を強制され、一方は独身を強制されている。この転換と対比は非常にうまい。
形勢逆転を経て、結局は主人公には森の中で愛が芽生えてしまう。そしてそれが相思相愛であり、禁じられたことで逆説的に素の自分とフィットする相手と巡り合うとはなんとも皮肉である。ホテル内のグループを襲撃し、カップルへの心理的揺さぶりをかけて撤退という戦術は、なんとも嫌らしい監督の性癖のようなものがみてとられる。

森のグループでの掟を破ったことにより、文字通り「恋は盲目」状態となり、主人公たちは森からも逃亡を図る。そして最後は明示しない結末で締めくくられる。

現代の強制される形式ばった恋愛・結婚の圧力と、これまた意固地な独身主義などを象徴化し、二項対立にとどめずもっと普遍的な個人単位の愛情や信頼を軸に、さらに監督の変態さが強く反映された奇妙な作品だった。
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