ヴェルヴェっちょ

オーバー・フェンスのヴェルヴェっちょのネタバレレビュー・内容・結末

オーバー・フェンス(2016年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

佐藤泰志の小説を映画化した「海炭市叙景」「そこのみにて光輝く」に続く「函館3部作」の最終章。

妻(優香)に見限られて故郷・函館に戻った白岩(オダギリジョー)は、職業訓練校に通いながら失業保険で生計を立て、訓練校とアパートを往復するだけの淡々とした毎日を送っていた。そんなある日、同じ訓練校に通う代島(松田翔太)にキャバクラへ連れて行かれた白岩は、鳥の動きを真似する風変わりなホステス・聡(さとし)(蒼井優)と出会い、どこか危うさを抱える彼女に強く惹かれていく…。
訓練校の科目対抗ソフトボール大会に一縷の望みを託す白岩。フェンス越えなるか。

廃人のように倦み果てた白岩。年下の若者たちに言い放つ。「今のうちにたくさん笑っといた方がいいよ。すぐに面白いことなんかなくなるからさ」。
邦画の魅力が凝縮された作品でしたね。
自宅と職業訓練校を往復するだけの灰色の日々。オダギリジョーの、疲弊した目つき、煙草をふかし、ビールを呷る様、一挙手一投足が画になる。
ダチョウの求愛のダンスを披露する聡。彼女もまた病んでいる。
そして、職業訓練校の森(満島真之介)も、爆発寸前の鬱屈を抱えていた。
明るい未来は見出せなくても、ソフトボール大会にわずかな希望を託す彼らの日々が切なく、痛々しい。