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この世界の片隅にのsuのネタバレレビュー・内容・結末

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

評価基準
1.人に薦められる
2.手元に置いておきたい
3.良い意味で裏切られた
4.発見がある
5.その他
の5つの観点から評価(最大各1点)すると、
1=1/1点 2=1/1点 3=1/1点 4=1/1点 5=1/1点 → 5点
【感想】
劇中、すずさんに対して「普通」という言葉が何度もかけられていたけど、この映画には「普通」がきめ細やかに描かれているのだと感じた。仕掛けなしに、自然と心が動かされる映画だった。戦争のアニメ映画といえば「火垂るの墓」がぱっと思い浮かぶ。この世界の片隅にを観る前には、そういう映画なのかなと想像していたけど、それが見事に裏切られた。

戦争の時代を生きたわけでもない人が、戦争の時代を思い浮かべるとなると、どうしても、テレビとか新聞とか、学校の授業とか、そういう真面目に語られるべき場面で作られるイメージを前提にするのではないだろうか。概して、それは暗く、重苦しい印象として。すべてがそうではなくても、少なからずはそういう印象が先行するのではないだろうか。そういう印象を想定していたけど、この物語はとにかく明るいと思った。すずさんの少し間の抜けた天真爛漫さが、とても素敵だった。戦争の時代にだって当然、ユーモアや娯楽はある。戦死する人、後遺症の残る負傷を負う人もいれば、無傷で2016年まで生きている人もいる。それがその時代の人たちの普通であって、それを今の時代の人が見ると、異様なものに映ることがある。もちろん、戦争はない方がいいものだけど、だからって、戦争の時代に生きた人たちが、今の時代に生まれた人たちよりも不幸せなのかというと、そうではない。戦争の時代にだって、今の時代と何ら変わりない幸せは存在する。観ていてそう思った。

誰もが今日、この世界の片隅に生きているわけだけど、そういう普通がわかりにくくなっている時代でもあるのではないだろうか。そういう時代に、普通のよさ、素晴らしさを教えてくれる作品はそれほどは多くはないのかも知れない。

この映画はそういう幸せを見せてくれた。どんな時代にも変わらない、普遍的かつ本質的な幸せの価値に気づかせてくれる力があると思った。
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