真田ピロシキ

この世界の片隅にの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
3.0
この映画がNHKで放送されるらしい。公共とは名ばかりの忖度ボッタクリ放送が流せる戦争映画ってつまりはそういう耳障りの良い戦争映画ってことじゃないんですか?だって『野火』なんかグロ表現がなくてもきっと流さないでしょう。被害者意識ばかりで加害者性が欠如してると批判した評論家がヒステリックに叩かれた事と連なる。

主人公がボーッとした天然というのが処世術で実家に帰った時に「お嫁に行った夢見てたわー」と無意識ですら演技をしてしまうキャラクターなのは深い。玉音放送の時に激昂したのは彼女だけで他の本心で生きていたように見えていた皆がそりゃあ勝てないだろうと分かっていながら忠君愛国生活していた事が一層根深い。しかしその点に物語として焦点が当てられてたかと言うと疑わしくて、戦時中をほのぼのとすらした日常風景として流していた本作は昔ならいざ知らず歴史修正主義者が跋扈する今では危険と感じる。自分も公開当時は本作を取り巻く名作雰囲気に流されていて本当に空気ってやつは恐ろしい。映画ファンの熱狂や賞、興行成績。そういうものからは絶対に距離を置かないといけないと本作やシン・ゴジラは思い出させる。時代性を頭の片隅に追いやれれば映画自体は1人の人間の生き方を描いた物語として良いと思うんですけど。