このレビューはネタバレを含みます
とことん博愛主義を熱く貫く宮沢りえの素晴らしさ。
僕自身も似た境遇にあったこともあり、
大いに泣いた。
いじめと戦っている娘への対応や
その娘のいじめへの対応法は
普遍的にはまったく正しくない点は要注意。
このケースではたまたまうまくいってよかったレアケースと
思っておいたほうが安全。
ここ数年見よう見ようと思っていて
ようやく見たのだが
勝手に想像していた内容とはだいぶ違った。
母と娘の関係が主軸の、もっとリアルめの作品だと思っていたので。
実際はかなり「映画」的な作りになっていて
「これは映画」ということが鑑賞者に折々に意識される作りだった。
同じ内容をとことんリアルに作ったほうが入り込めるだろうが
同じ時間内に収めるのは至難の業になるだろうから正しい手法なのだろう。
娘が実の娘ではなかったと明かされるカニ食堂の前の車中のシーンと、
宮沢りえ自身も母に捨てられた過去を持っていたというくだりが
この映画の２つの大きな驚きのシーン。
有無を言わせずに娘を置いて発車するのは乱暴だが
主人公の性格を考えるとじつに「らしい」し、
病気のことを思えば理解できる。
手話を習わせていたというのも伏線があったこともあり泣ける。
母親に会うことを拒絶され
門の上に置かれた犬の小さな置物を
せめてもの思い出としてこっそり持ち帰るのかと思いきや
勢いよく投げつけてガラス窓を割るシーンは衝撃的。
歩くこともおぼつかない体力なことを考えるとなお一層。
ラストは、母親が亡くなって
皆が悲壮に暮れるシーンで終わるか、
そこから立ち直ったところで終わるのではと
数年の間で勝手に妄想していたのだが
まったく異なり、
皆が外でにこやかに笑って飯を食い、
気持ちよく風呂に入って終わるというものだった。
これも、宮沢りえ演じる双葉の熱い力のおかげ。
自分も人生の残り時間を無駄にすることなく
生きなければと反省。
オダギリジョーは
朝ドラ「カムカムエブリバディ」にも通じるダメ夫役。
そもそもクズ男としての佇まいが格好いいし
クズ行動の原因がやさしさのせいというところが
支持される理由なのだろう。
※2022.9 Jテレ
※娘がたくみくんと再会するシーンのところ数十秒見逃したが、後にGyaoで見た。
