TAK44マグナム

パッセンジャーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

パッセンジャー(2016年製作の映画)
3.6
人生において大切なこと、それは、何処で生きるのかではなく、誰と生きるのか。


クリス・プラットとジェニファー・ローレンスのダブル主演でおくるSF恋愛映画。
なにしろ主要な登場人物が4人しか出てこない(のち一人はアンドロイド)無人島漂流記みたいな話なので、スポットライトを浴びるのはクリス・プラットとジェニファー・ローレンスのみ。
キャスティングにはアンデイ・ガルシアの名前がありますが完全に空気です。
ローレンス・フィッシュバーンは後半に出てきますが、ストーリーの都合上必要になるだけの役でして、あまり活躍するわけでもありません。
クリス・プラットたちの関係に何かしら重要な影響を与えそうで、実際はそこまででもない、ちょっと微妙なキャラクターでした。


120年間の星間航行によってスペースコロニーへと向かっている巨大移民宇宙船アヴァロン。
新天地への到着まで90年をのこしているにもかかわらず、ジムは冷凍冬眠から目覚めてしまう。
たった一人という宇宙での耐え難い孤独。
しかし、やがて理想の女性オーロラが現れる。
そして時を同じくして、アヴァロンにも不可解なシステムエラーが出始めていた。
はたしてアヴァロンに何が起こっているのか?
ジムとオーロラの人生はどこへ向かっているのであろうか・・・?


・・・・・いや、普通に駄目でしょ、それをやっちゃ(汗)
そりゃ、どんなに温和な人でも鬼のように怒り狂うと思いますよ?
ある意味、残りの人生すべて、監獄の中みたいなものだもの。
いくらバスケやダンスゲームやプールや宇宙遊泳が出来たとしても、そんなアクティビティだけじゃ生きてはいけんとです。
というわけで、過激なヌード(どころじゃない)画像が大量に流出しても堂々としていられるほど精神強度が超人的なジェニファー・ローレンスでも半狂乱で殴りかかってくるってもんです!

でもね、クリス・プラットの気持ちも分からんでもないんですよね。
一生、自分以外の人間に触れることができない。
そんな残酷すぎる孤独に耐えられるのはゴルゴ13ぐらいなものだし、ちょっとぐらい魔がさしてもおかしくはないでしょう。
ただ、一応は悩むんだけど、意外とすぐに心が折れてしまうので、もっと葛藤する姿をみせたほうが良かったような気はします。
テンポは確実に悪くなっただろうけれど、そこをうまくプラスの方向に持ってゆくのが監督の腕じゃないのかなぁ?

ラストも、人によってはジェニファー・ローレンスの決断が理解できないかもしれないけれど、これもまた心理描写が不足しているからなんですよね。
前半は割りと丁寧に状況説明とかしてみせてくれるくせに、後半は唐突に大きなアクシデントが起きて、展開もかなり雑になってしまいます。
なんかもう、ベタな展開が待っていて、流れに任せてジェニファー・ローレンスが「ひとりでは生きていけない」と自分の本当の気持ちに気づいてしまう。
ここら辺りも大事な根幹となる部分なのに、勢いだけで済ませちゃっているものだから、観る人によっては取り残された感が酷いんだと思いますね。

ネガティブな評価が多い訳は、クリス・プラットが演じるジムという男が悪人ではないことは分かっているし、孤独に耐えかねた末の行動であることも充分に理解できる・・・だけれども、それを作品全体に染み渡らせるには描写がまだ不十分であった・・・きっとそういう事なのでしょう。

それと、いくらなんでも120年間も宇宙を旅するのに、あまりにもフェイルセーフ(安全対策)がお粗末なのも目につきますね。
これで、それまで事故が無かったというのは、たんに会社が隠蔽しているからなんでは?と、勘ぐってしまいます。

様々なご都合主義が目につく映画ではありますが、映像は素晴らしい。
セットもCGも、総じて美術関係は目を見張るものがありました。
美しい宇宙空間、個性的なアヴァロン号の外観、無機質で豪華な内部施設・・・SF映画にとって画は世界観を表すための非常に重要なモノであり、その点においては個人的に充分な及第点をあげられる作品でした。

ジェニファー・ローレンスも美しく撮られていて(水着姿もあり)、イチャイチャしている場面ではクリス・プラットが心底羨ましかったですよ。
あんなに情熱的で扇情的なキスをジェニファー・ローレンスとできるなら二人ぼっちも悪くないかなぁ・・・なんて思ってみたり。
口は軽いが紳士なバーテンダーもいることだしね。

今回、ブルーレイ3Dを90インチスクリーンで鑑賞しましたが、やはり飛び出しを重視したカットは殆ど見当たりませんでした。
3Dが効果的だと思えたのは、冒頭のアヴァロン号や終盤のスペクタクルシーンぐらい。
これなら特に3Dで観る必要もないかと。
ただ、宇宙空間のシーンは立体視がちゃんと出来るので、没入感は間違いなく2Dよりあると思います。

それから、この手の設定でいつも頭に浮かぶんですけど、何百年単位で星間航行しているうちに地球で何か(例えば世界戦争とか)起きたらどうするんだという。
第一、途中で旅行会社が潰れたら?どうなるんだろうか。
劇中でも平気で120年間やら240年間やらと言っているけれど、ひとつの世紀が軽く終了してしまう単位で語られると、なんだかクラクラと目眩がしてきますね。

まあ、「人生の分岐点で、どの人生を選ぶのか」という、普通に暮らしていてもいつかは考えないといけないテーマを、そこまで重苦しくならないように描いているところは好感がもてたし、とにかくジェニファー・ローレンスの魅力が「こんなイイ女なら間違いを犯しても仕方がない」という説得力をギリギリもたせているので、個人的には大変楽しませていただいた次第であります。


でも、やっぱり、してはいけない事なんだよなあ。
分別のできる大人にならないといかん!
でないと、ジェニファー・ローレンスの鉄拳をあびることになりますからね!
そんな強そうでも、実はか弱い女性なジェニファー・ローレンスに萌えるならオススメです。
あ、あとクリス・プラットのケツが見られますよ!


P.S
元々の脚本では、二人の子孫が出てくるものだったみたいですが、この状況下なら普通、子供を作ろうと考えますよね。
植物も良いですが、そこも描いて欲しかった気もします。


セル・ブルーレイ3Dにて