マヒロ

或る終焉のマヒロのレビュー・感想・評価

或る終焉(2015年製作の映画)
3.0
ある理由から家族と疎遠になり独りで暮らしている看護師のデヴィッド(ティム・ロス)は、終末期の患者の介護をメインに行なっており、親身になりすぎるが故にトラブルを起こすこともあった。仕事外でもひたすらトレーニングをするのみで趣味もなく、禁欲的に介護に勤しむデヴィッドだったが、患者からある頼まれごとをされ葛藤する……というお話。

『父の秘密』のミシェル・フランコ監督作品。介護というテーマを取り扱っているが、そこに映画的な感動はほとんど持たせず、淡々と患者に向き合う主人公の姿を描いていく。
なんだったら主人公たるデヴィッドですら何を考えているのか分からず、患者に寄り添うような姿勢を見せつつ、預かり知らぬところで勝手に患者の身内のフリをして他人に接したりと、不可解な行動を取ったりするのがどことなく不気味。過去のトラウマから“介護すること”自体に救いを求めているというか、患者を救いたい…というよりはあくまで自分の癒しのために仕事に没頭しているのかなという気はした。

唐突なラストにはかなり驚かされると共に、生きる屍のように茫然と生き続けていたデヴィッドにとってはある意味真っ当な結末なのかなとも思えた。ただ、このシーンだけ「観客をビビらせてやろう」という色気を感じてしまい違和感があった。映画全体がそういう分かりやすい演出を拒否するような作風だったので、なんかもったいない感じがする。

(2023.93)
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