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ヴィジットのTTのレビュー・感想・評価

ヴィジット(2015年製作の映画)
4.5
シャマラン・イズ・バ~ック!!

近年はカンフーくんみたいなハゲ坊主の大冒険とか、ウィルスミス親子の記念映画とか撮ってて、「シャマラン、お前は一体どこへ向かおうとしてるんだ?」と失望していたが、今回は本領発揮。本当に見たかったシャマラン映画が観れてスゲー嬉しかった。

ある姉弟が今まで会ったことのないお爺ちゃんお婆ちゃんの家に帰省するというそれだけのストーリーなのだが、シャマランが監督なので『ぼくのなつやすみ』的なアットホームなものになるはずはなく、物語が進むにつれて『悪魔のいけにえ』といった田舎に行ったらトンでもない目に遭う田舎ホラーの様相を呈していく。

ジワジワと不可解な恐怖がやってくるのと同時に笑いもぶち込んでくるシャマラン節が全編にわたって炸裂。特に、婆さんには爆笑しながらも、怖がらせてもらった。普通、ババアのスカートが擦れてケツ丸出しとか「ウワッ!」ってな感じでカメラのフレームに突然入ってきたりなど、薄ら寒いギャグ(俗に言う「いないいないばあっ 」)にしかならないようなことを、シャマランは本気でやっているからこそ、笑いと恐怖が混在する面白い場面が生まれるのかもしれない。楳図かずお先生が「恐怖と笑いは紙一重」と言っていたがまさしくその通り。この彼独特の演出が、これまでのシャマラン作品の中で最も活きていた気がする。

台詞や弟のラップでヒントが沢山出るからオチというか真相は予想通り。ただ、それまでの「意味不明な」怖さが「真相が解ったことによる」厭さに転化し、ジェットコースターのように伏線が回収されていくクライマックスは見事としか言いようがない。また、この厭な禍々しい雰囲気で溢れかえっている感じは何かに似てるなと思ったら、平山夢明の小説だった。あと、弟が起こすある行動が『サイン』のクライマックスみたいで興奮した。
 
「ドンデン返しがない」という声を聞くが、そういうこと言う人たちはこの映画をちゃんと観たのかねぇ。あんだけ怖かったのが、最終的にあんな感動的な着地するんだぜ。そっちの方がどんなドンデン返しよりもビックリだったよ。

低予算($500万ドル)と一軒家という限定された舞台だけで、これだけ面白い映画を作ることができるシャマランは、そろそろ正当に評価されてもいいはず。

ともかく個人的には『アンブレイカブル』や『サイン』、『レディ・イン・ザ・ウォーター』と同じくらい愛し続けていくであろうシャマラン映画だ。
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