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故郷の便り/家からの手紙の一のレビュー・感想・評価

故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)
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アケルマンが映すニューヨーク風景映画。あれは70年代始めにブリュッセルからNYCに移り住み、映画作家を目指していた彼女が立った場所、歩いた道、乗った電車なのだろうか。そのときにアンダーグラウンド・シネマ(特にマイケル・スノウ)に感化されて撮られたのが72年の『ホテル・モントレー』や『部屋』といった実験作品だが、75年『ジャンヌ・ディエルマン』の成功を経て撮られた本作で、再び非物語に立ち戻り76年のNYCをロングテイクで捉え続ける。その映像に滞在当時ブリュッセルの母親から送られた手紙の朗読が被せられる。娘の筆不精を責め続ける母の心情はまるで一方通行のように思えてしまうのだが(当時のアケルマンは映画のことしか頭になかったんだろうと想像がついて楽しい)、家庭内のケア労働に縛られる母の姿を描いた『ジャンヌ・ディエルマン』、そして母の言葉を監督自身が読み上げる本作は、母との和解の道程のように思えてくる。そして78年『アンナの出会い』において、アケルマンはヨーロッパをさすらう女性映画監督アンナとして母と出会い直し、親密な時間を過ごすのであった。
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