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アンナの出会いのSPNminacoのレビュー・感想・評価

アンナの出会い(1978年製作の映画)
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パリからドイツへ、ドイツからブルージュを通ってまたパリへ。映画監督であるアンナの旅。
そこで出会った人々は行きずりだったり偶然だったり、微妙に噛み合わなかったり親密だったりする関係。特に相手がずっと自分語りしてる(知らんがな)のを捉えたショット、不在の存在は『私、君、彼、彼女』と同じような構成で、相手ごとにアンナの捉え方が異なる。逃げた妻の代わりや、息子の結婚相手としての役割を迫る相手がいれば、心を許したシスターフッドもある。旅先には出会いと別れがあり、迎えに来た男がいる。
モスグリーン基調の背景に赤い服、車窓から見える景色がすごくいい。薄暗い客車にパッと明かりが点く瞬間、煌々と照らされた無人のホーム。行き交う人の流れ、流れていく駅舎、TVで流れる砂嵐、夜のパリを流れていく車の赤いランプ、街のネオン。風景だけではどこにいるかよくわからないが、出会う人はその土地に何かしら理由がある。戦争や闘争の過去が現在に流れている。アンナ、アケルマンがユダヤ人というのもあり、ドイツやブルージュからパリへと自由を目指す旅かもしれない。そしてその旅は円環する。
誰かといてもホテルの部屋はアンナ個人の場所、というかアンナ自身が移動する部屋だと思った。ロードムービーだけどアンナは運転手ではなく、乗り物を換え乗客として運ばれていくだけ。その部屋の窓から見る相手=景色が移り変わり、流れていく時間の旅。まるで棺に横たわるようなアンナに、今どこにいるのかと問いかける。あの歌、悲しすぎた…。
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