たいてぃー

さようならのたいてぃーのレビュー・感想・評価

さようなら(2015年製作の映画)
4.0
すごく重く、どうしようなく重く、そして暗く、キツイ作品。最近の日本映画と言えばエンタメ性があって、笑い有り泣かせようも有りってのが多いが、そんなのとは一線を画す作品である。
平田オリザの15分ほどの戯曲作に、彼が主宰する劇団、青年団出身の深田晃司が脚色・監督し、主演は、これまた青年団出身で戯曲版でも主演のブライアリー・ロングである。
映像は、主役ターニャの家の中から映した、窓際のソファーが中心となる。ここで起きる数々のことが、悲惨で美しくもあり、観ているものの心を突き崩していく。また、アンドロイドのジェミノイドFの語る谷川俊太郎他の詩が意味深長で、この詩と映画のストーリーを関連付けようとすると、難しくて訳がわからなくなる。詩自体も意味がわからなくなる。
諏訪近辺での撮影らしいが、霧ヶ峰と思われる丘がきれいで感動。湖は白樺湖か。人物だけを斜めで表現する映像も秀逸。
役者では結婚を願望する青年役の村上虹郎が良かった。アフリカって叫ぶシーンが特に。着々と進化している、今後も期待大。新井浩文もズルい卑怯な役をやらせるとウマイ。
ラスト付近でのアンドロイドの行動に感動した。車椅子から転がり落ちるシーンは、人間の吹替えだと思われるが、このあたりの描写は、アンドロイドの感情を持つ人間への強い思入れ、若しくは復讐心が表現されているのではないかと感じた。ラストの花は美しいが、これが希望の光と言えるのか、大いに疑問ではある。
深田晃司の次回作も十分期待できる。