ゆっこ

マーシュランドのゆっこのレビュー・感想・評価

マーシュランド(2014年製作の映画)
4.0
うううん。好きかも。そして怖い!
オープニングで映される、大きな川から毛細血管みたいに川の流れが分かれていく湿地帯の空撮。あっちに進めるかと思えば、行き止まり。脳みそ柄にぐねぐねウネウネ行き着く先が見つからない。そのうち泥に足がとられて動けなくなる。助かるには、鳥になって飛ぶしかない。そんな映画。

【下の方にネタバレあるよ】
妊婦の妻を残し都会から左遷されてきた刑事と、地元に根付いてどれくらいかのベテラン刑事。
少女二人の失踪・殺人事件を捜査するんだけど、主人公であるこの二人の心理描写が劇中ほとんどないのが最初はひどく違和感あって。刑事としては熱意というか、黙々と淡々としっかり捜査はするのだけど、そこに感情があまり演出されていない。
ベテラン刑事の方が血の気が多いなくらいで。
だからこそ、カーチェイスとラストの沼の数少ない見せ場がやたら盛り上がって、ラストに向かっていきなりギアを上げてくる。
二人の捜査の甲斐あって事件の黒幕が次々と明らかになるんですが…。
【ここからネタバレ】


この映画の怖い所、これは私の想像ですが、このマーシュランドな街全てが真っ黒な沼。麻薬と、地元の権力者による少女達への虐待と殺害。それを全て隠蔽する警察とのつながり。劇中美しく見えていた街は、本当は牢獄だった。
ベテラン刑事フアンの立ち位置が憶測を呼ぶ作品ですが、私は、彼は権力者の協力者だとは思いますが、性的嗜好や楽しみとしての協力者ではないのかなと思うのです。
彼は血尿で薬を飲み、湿地の泥に足を取られず空を自由に飛ぶ鳥を意味深に見つめる。死に肩を掴まれてもなお生への執着が強く、あの街で生きるには、過去の仕事を生かし少女に拷問もし、権力者の協力者、かつ弱みを握る立場になるしかない。
フアンと権力者の握手のシーンは、「バレてますよ」とわざと知らせ、「けど自分が収めますよ」とアピールに行ったシーンに見えました。
そしてまんまと、自分と同じようには街にハマらないであろう若い刑事に手柄を譲り、栄転として都会へ戻す。街から追い出す。万事解決。
ラスト数分で心の中を一瞬にかつ一気に見せられて、鳥肌と吐き気がしました。
そこまで二人の刑事の心理描写やキャラを押し出さなかったのはこうゆうことかと。

生への執着が強いというより、死の向こうで待っている地獄が自分でも見えていて、怖くてもがいている。惨めで悲しい、そして怖い男だなとラストにゾッとしました。ダメだけど、有能な人だよなあ…。怖。

しかしフアンが若い刑事ペドロを殺したり仲間に引き込もうとせず、君はそのまま子供と生きろ。と、少しでも思って牢獄の街から外に出してあげてたらいいなぁ…。なんか物悲しいんですよね、この人。
ゆっこ

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