けーはち

カンフー・ジャングルのけーはちのレビュー・感想・評価

カンフー・ジャングル(2014年製作の映画)
3.6
主人公は警察武術教官のドニー・イェン。他流試合で相手を死に至らしめた彼は自首。三年後、謎の刺客が知り合いの武術の達人を次々決闘で殺していくので香港警察へ捜査協力を申し出る。古いカンフー映画へのリスペクトと現代劇のサスペンス風味の融合にひきつけられる(往年のカンフー映画の俳優やスタッフがカメオ出演し、彼らをエンドクレジットでいちいち紹介してくれるのも、なかなか気が利いている)。

武術の達人を相手の最も得意な技で葬り去り最強を証明するという、困ったチャンな欲求の持ち主である容疑者。彼を発見してから建物伝いにパルクールで追い詰める追走劇はモダンだが、ドニー大兄が武術家同士ゆえ鍛錬の痕跡から相手の腕前を悟るといったシーンが続くのは本当にシブいのだ。

ワン・バオチャン演じる狂気の刺客は「最愛の妻を亡くし、武術以外の生きる意義を失った」だけでも充分なのに、その上「生まれつき足の長さが違う身体障害を抱えながら、血の滲むような鍛錬の末に最強になった」というアホみたいな設定の盛り方。妻の誕生日にノコノコ自宅に帰ってきたところを警察に待ち伏せされるのだが、わざわざ目潰しとして妻の遺灰を投げつける展開は、狂気演出かも知れないが、ちょっと度肝を抜かれて笑ってしまった。

ドニー大兄との車がビュンビュン行き交う高速道路での一騎打ちは言うまでもなく、どのシーンも役者の身体能力に現代劇ならではのシチュエーションを生かしたアイデアに富む素晴らしい格闘の魅せ方になっている。アホアホな脚本が悪目立ちするが、そこも含めて楽しいカンフーアクションの良作。