プペ

ヒトラーの忘れもののプペのレビュー・感想・評価

ヒトラーの忘れもの(2015年製作の映画)
3.7
大人たちの始めた「戦争」に翻弄され、その後始末を押しつけられた少年たち。
それは、かつて彼らの父や兄たちが異国に埋めた膨大な数の「地雷」を取り除くことだった。


あの少年兵たちの姿は、恐怖と悲しみをいつまでも生み続ける「戦争」の理不尽さ、残酷さそのものではないだろうか。
か弱き者、小さき者たちが真っ先に犠牲となる「戦争」。
「戦争」は終わったはずなのに、ここでは尚も凄惨で非人道的な行為が横行している。

少年たちに課せられる苛酷な任務の描写には、″人の命が軽んじられる″というのがどういうことなのかを実感させられる。


映画後半、爆発が起こるたびに不謹慎ながら次第に残酷極まりないブラックなギャグのようにすら感じてしまった。
生き残ったわずかな者たちは「この任務が終わったら帰国させる」という約束を反故にされ、さらに危険な地雷原に送り込まれる。
捕虜に地雷を除去させること自体が明らかに人権に反する残虐な行為だったが、そこには多分に敵だった者たちに対する「復讐」の意味合いもあったのだろう。
それをまだ年端もいかない少年たちが負わされたということ。
「戦争」とは、こういったことが平然とまかり通ってしまうものなのだ。


観ていて非常につらくなる映画だけれど、本作はしっかりと押さえておくべき作品だろう。
これは70年以上前の他所の国の昔話ではなく、今を生きる私たちに直接繋がる話なのだから。

巻き込まれると戦場へ送り込まれ、捕まり、強面で厳しい軍人に対し「はい、軍曹殿!」と返事をしながら地雷の処理をさせられる。
逃げることも口答えすることも許されない。
ブラック企業の更に上を行く強制労働。
失敗すれば爆死が待っている。
そして、そんな″軍曹殿″もまた、上官の命令に従う序列の中の一員に過ぎない。
もしも上に背き、下の者たちを救おうとすれば、我が身を捧げる覚悟をしなければならない。

少年たちが″ドイツ人だから″ということでその死に同情のかけらも示さないデンマーク人の大尉や、あの母親の態度は理解不能なものではなく、それはいつ何時、私たちが他国や異なるコミュニティの人々にむけて投げかけないとも限らないものだ。
そして、あの少年たちの身になって映画を観れば、これほどの恐怖はない。
憎しみが人の死を正当化するのが「戦争」というもの。
あの大尉も、あのアメリカ人の兵士たちも、家族を愛する″普通″の人々に違いない。
ドイツ人の少年兵の死に「いい気味だわ」と口走ったあのデンマーク人の母親が、幼い娘を想う普通の女性だったように…。


「戦争」は普通の人を「非情」にしてしまう。
だからこそ、もはや逃げることも抵抗することもできなくなってしまう前に食い止めなければいけない。
「家に帰りたい」と願いながら、その多くが死んでいったあの少年たちのような存在を二度と生み出さないためにも。
プペ

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