猿橋

ATARI GAME OVER アタリ ゲームオーバーの猿橋のレビュー・感想・評価

3.0
都市伝説の真実を追究!から一転、汚名を着せられ、追放され、忘れ去られたゲームクリエイターの名誉回復に雪崩れ込む終盤の展開にグッとくる。
ただ、恐らく、この逆転の流れはドキュメンタリー企画時点で予定されていたものだろう。でなきゃ、発掘現場に本人を呼ぶ訳ない。そもそも、これだけ関係者にインタビューを重ねれば、掘り返す以前に、真相は大体の予想はついていたはずだ。
このドキュメンタリーの核心は、都市伝説の真相でも、一クリエイターの知られざるドラマでもなく、それらを包むゲーム、ひいてはIT文化の創成期の「熱」だ。
ジョブズも在籍した会社で、スピルバーグとも対等にビジネスし、事の次第によってはそういった現代の偉人たちと並ぶ位置に立ったかもしれない男が、「ET」の失敗を機に、職を転々とする人生を送る。それもこれも「ET」の失敗のせい、というある種の神話を生むだけの熱が、かつてのシリコンバレーにはあり、その中心にアタリがあった。
その「神話」の真相を暴くことで、その神話の呪縛から1人の男を解放し、逆説的に、そんな神話を生むだけの熱のあった時代の空気を伝える。そして、その「熱」の延長線上に現代があることも体感させる。
いかにもギークなノリと見せつつ、世界を見る新しい視点を提供してくれる、優れたドキュメンタリーだと思う。
猿橋

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