カタパルトスープレックス

バービーのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
2.8
グレタ・ガーウィグ監督のバービー人形を題材とした作品です。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のようにマーケティングがしっかりしていて、ポリコレとかいろんな部分に気を配っている印象。

とてもポップな世界観を打ち出し、バービー役にマーゴット・ロビー、ケン役にライアン・ゴズリングを配役。パッケージングとしてはとてもよく出来ています。「パッケージングとしてはよくできている」はエブエブなど最近のマーケティングドリブンな作品の特徴だと思います。

グレタ・ガーウィグ監督作品は『レディーバード』(2017年)にしても『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』(2019年)にしてもカタルシスが少ないため、テーマがグッと浮かび上がってこない。とても優等生的。ただし、本作はマーケティングドリブンなために監督の作家性は以前より薄い気がします。いろんな要素を盛り込みすぎ。

世界も人間も不完全だけど、全部ひっくるめて自分らしさを大事にしよう、男も女も関係なく。グレタ・ガーウィグ監督のテーマは一貫していて、本作もそのようなテーマとなっています。しかし、カタルシスがないので、平たんに流れていってしまう。

大枠としてはバービーとケンを中心とした人間性の開放の話が中心となる。それにマテル社の人たちやマテル社の秘書とその娘が関わってくる。しかし、無駄な要素が多くてとっちらかった印象を受けます。

マテル社は全く必要ない要素だったと思います。以前に同様の事件が起きたことが示唆されますが、それがどんな事件かは分からない。アメリカ人だったら分かるのかもしれませんが。そして、今回の事件がどんな結果を引き起こすのかも分からない。分からないのだから、それを解決しようとするマテル社は必要ないし、実際に事件の解決にも関わらない。

人間の母娘もよく分からない。娘は単なる反抗期の娘な感じ。反抗期が物語の終わりに解消されてるのもよくわからない。母はマテル社の秘書なんですが、なぜ彼女が重要なカギを握るのかが分からない。強い動機づけがないんですよ。あの二人である必要がまったくなかった。キャラクター造形がマーゴット・ロビーとライアン・ゴズリングの個性に依存しすぎ。

よかったのは前半のポップな世界観とマーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、アラン役のマイケル・セラくらいですかね。あと、何か所か笑える部分はありました。正直にいえばガッカリしてしまったのですが、観る前の期待値が高すぎたのかもしれません。