スカポンタンバイク

バービーのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.8
いやぁ、面白かったなぁ。
元々、グレタ・ガーウィグ監督が大好きというのもあったが、流石としか言いようがない。
彼女の映画はどれも女性中心というのもあり、フェミニズム映画として扱われる事が多いが、表層的にはそう見えても実際少し違う。「ストーリー・オブ・マイ・ライフ/私の若草物語」が特に分かりやすいが、現代での進出していく女性を描きながらも、今までの古風な在り方への憧れと幸せを否定しないのだ。ある種それぞれがそれぞれを押し付ける事の傲慢さを持たせており、そこのバランスを非常に丁寧に描いてきた監督だと思う。
今作「バービー」でも正にそのバランスを描いていた。表層的には女性支配の王国バービーランドとして描きながらも、それは男社会の逆転した写鏡であり、根本的な問題は何も変わっていない。だからこそ、ケンのアホさが目立っているから、そっちに視線が行きがちだが、どちらに対してもある種の滑稽さを指摘している。それをバービーは没落していくとともに、ケンは出世していくとともに学んでいく。それぞれには瞬間楽しい事だっていっぱいあるけれど、それが本当に望む形ではなかったのだと自覚していく。自分にとって本当に足りていなかったものはなんなのか。そして、定番のバービーとは、現代において本当にファシストなのか。
今日「多様性」という事がナチュラルに使われるようになって久しいが、改めてその目指すべき形とは何なのかを、男女問わず人間としての在り方、変わっていく事を丁寧に描いている。ただ、これまでのグレタ・ガーウィグ監督作と比べると、そこの主張を絶対に聞き逃させないというくらい念押しでセリフにしてくるため、ここは人によって「説教くさい」と思わせる所があるかもしれない。ある種教育番組的な作りをしている。
そういう意味でも、凄く地に足をつけまくって、「多様性」「ポリティカリーコレクトネス」とは何なのかを改めて見直していこうという姿勢がいつも以上に強い切実な映画に仕上がっている。そういう事を抜きにしても、可愛い楽しい映画になっているので、色んな人に見てほしい。

映画好き的には、今作はスタンリーキューブリック作品がいくつも見え隠れしてるのもニヤッとさせられた。スナイダー版ジャスティスリーグとか出てきた時は「あれ?俺はサウスパークを観てたんだっけ?」と思い、「少年少女は観てないから分からんだろ!」って感じだったな。w